Risk Management
リスクマネジメント
RiskManagement

連結ベースでの総合リスクマネジメント(ERM)
当社グループのERMは、連結定量的リスク管理による「資本利用率のガイドライン運営」を核に展開しています。資本利用率は、金融機関格付においても重要な判断基準の一つである「リスク耐久力」の評価に使用されています。したがって当社も、一定の資本吸収バッファー内にリスク量を収めるよう、資本利用率のガイドライン運営を行ってきました。事業領域が拡大している状況では、投資家を中心に資本量とリスク量の関係性に注目が集まることからも、資本利用率は当社の成長持続性やさらなる投資余力の有無を客観的に判断する基準として重要な指標となっています。
資本利用率の水準については、当社が金融機関のような規制業種ではないことから、あくまでもガイドラインとして運営しています。事業運営においてはM&Aなど、その時々の「商機」を逃さないことも重要なリスクマネジメント上の判断となります。会社の健全性を静的に捉えるのではなく、3年程度の中期におけるリスク量の増加水準と利益成長によるオーガニックな自己資本比率の積み上がり見込みや資本政策の許容度なども考慮することとしています。
「中期経営計画2027」では、ERMによる経営資源の効率的配分を目指したリスクコントロールフレームワークの構築を施策として掲げています。2024年度には、リスクプロファイルの上位を占める特定リスクカテゴリー(航空機、投資、不動産)に対して、リスク量ガイドライン(ソフトリミット)を正式に導入するなど、事業ポートフォリオのリスク分散を含むポートフォリオ・トランスフォーメーション(PX)を進めています。
当社グループではリスクマネジメントのミッションを、取るべきリスクに果敢に挑み、価値創出と成長を支えることと捉えています。今後も適正ガイドライン水準に資本利用率をコントロールしつつ、事業領域の拡大や環境変化に合わせて枠組みのレベルアップを図り、サステナブルな企業価値向上に努めます。
資本利用率ガイドラインイメージ図

経営レベルでの可視的なリスク情報管理(Management Information System)
当社グループは連結ベースのリスク計量および資本利用率のコントロールに加え、Management Information System(MIS)を行っています。これは信用リスク管理委員会と総合リスク管理委員会が中心となり、複数の項目で定期的にリスク情報をモニタリング*し、経営会議と取締役会に報告するものです。
グローバルでは、投資規模や資産規模が大きい米国の専門リース子会社であるAviation Capital Group(ACG)とCSI Leasing(CSI)に特に配慮しています。ACGは「リスクアペタイトフレームワーク」を導入し、「許容するリスク(例:航空機アセットリスク)」と「回避(軽減・移転)すべきリスク(例:金利・流動性・為替リスクなど)」を明確化するなど、独自の管理手法を取り入れレジリエント企業の典型として効果を上げています。さらにACGでは、カントリーやエアラインごとの集中リスク分散と、案件特性に応じた適正リスク・リターンの確保を骨子とする「新たなリスクフレームワーク」を構築し、個別案件ベースで運用しています。
- ※ 当社の各会議体におけるモニタリング状況については、「主なリスクと管理態勢」も併せてご参照ください。
ACGにおけるリスクアペタイトフレームワーク
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リスク許容度 | 管理レベル※1 | リスクの種類※2 | リスク管理手法 |
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アセット取得リスク➀ |
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残価リスク➁ カントリー・地政学リスク 与信リスク 業界・市場リスク ESGリスク |
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リマーケティングリスク➂ モデルリスク➃ オペレーショナルリスク |
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資金調達リスク 金利リスク 流動性リスク 通貨リスク 風評リスク |
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- ※1ACGの高い専門性により、積極的かつ主体的な管理が可能
- ※2ESGリスクを新たなカテゴリーとして追加
- ➀アセット取得リスク:航空機取得時の機種、調達方法の選択など、適切なポートフォリオ管理ができないリスク
- ➁残価リスク:リース契約時に想定していた残存価額で航空機を売却・処分できないリスク
- ➂リマーケティングリスク:航空需要の減退などによりリース契約満了・解約時に再リース先を確保できないリスク
- ➃モデルリスク:採算計算モデル上、金利や航空機価格の市場動向を適切にリース料へ織り込めず、案件実行時に適切なリターンを取れないリスク
非財務リスク(非定量)
事業領域の拡大、特に金融からサービス・事業への展開とともにリスクの定量評価にはなじまない非財務のオペレーショナルリスクが重要となっており、非財務情報のリスク指標(KRI)を定めてモニタリングし、取締役会などに報告しています。具体的な指標の種類としては、人事、情報セキュリティ、事件・事故、コンプライアンス、気候変動、法務・腐敗防止などがありますが、近年は「人権」「気候変動リスク」の把握・管理が重要となっており、人事・労務のスコープ拡大(単体から連結へ)、再生可能エネルギー、CO2排出量、省燃費機材(航空機)・電動車の保有比率などの環境関連指標の拡大に努めています。ステークホルダーの非財務リスクに対する関心は高まっており、今後も「人権」「気候変動」リスクのほか、サステナビリティの観点からESG/SDGsに関する有効な指標の拡充を図っていきます。
環境・気候変動リスク
当社グループは気候変動への対応を重要課題として認識しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、TCFD提言に準拠したシナリオ分析の実施と情報開示を開始するなど気候変動への対応を進めています。
リスク重要度評価によるシナリオ分析の実施
当社グループは5つの事業分野を有していることから、シナリオ分析の対象事業を選定するにあたっては、インダストリー別の気候変動リスクによる環境影響評価とGHG排出量・資産残高などの当社事業分野間での相対比較により、リスク重要度評価を実施しています。これまで、環境・エネルギー事業(太陽光発電事業)、航空機事業(航空機リース事業)、およびオートモビリティ事業(法人・個人向けオートリース事業)を対象にシナリオ分析を行いました。今後もリスク重要度評価に応じて、シナリオ分析対象事業の拡大と分析精度の向上を通じて、リスクの対応策と機会の獲得について検討を深めていきます。
リスク重要度評価について
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ステークホルダーにとっての重要度 |
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当社にとっての重要度 |
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リスク重要度を評価して抽出
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シナリオ分析の対象事業 |
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シナリオ分析におけるリスクと機会の認識
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環境・エネルギー事業 (太陽光発電事業) |
台風・豪雨などの異常気象による緊急性の物理的リスクおよび炭素税の導入・法規制の強化といった移行リスクについて認識しました。一方で、太陽光発電事業をはじめとする再生可能エネルギー事業の機会拡大も見込まれます。 |
航空機事業 (航空機リース事業) |
異常気象の激甚化の影響により被る物理的リスク、および各国の炭素排出目標や航空業界独自の規制といった移行リスクを認識しました。一方で燃費効率化・機体軽量化により優れた経済性を有する低炭素機体を十分に確保することで収益機会の増加が見込まれ、将来的には電動航空機などの新技術発展に伴う機会拡大も期待されます。 |
オートモビリティ事業 (法人・個人向けオートリース事業) |
異常気象の激甚化の影響による物理的リスク(洪水・大雨の影響による車両生産の遅延など)、およびガソリン車・ディーゼル車からEVへシフトすることに伴う移行リスク(給油から充電への変化等)を認識しました。一方でEVへのシフトにより、充電サービスや中古EVバッテリーの二次利用ビジネスなど、新たな収益機会も見込まれます。 |
環境影響評価について
当社グループは事業活動を通じた環境貢献を実現するため、自ら取り組む案件が環境にどのような影響を与えるのか、良い影響・悪い影響を認識することが重要と考えています。経営会議・案件審査会議に上程する対象案件については、「環境影響評価ワークシート」を用いて、環境に関するリスクと機会のアセスメントを実施しています。2023年度より、経営会議に上程する同ワークシートでは、新規案件取り組み時のGHG排出量増加の適切なコントロール手段としてインターナルカーボンプライシング(ICP)の試行的導入を開始しています。
気候変動リスクについて
気候変動関連リスクが当社グループの事業ポートフォリオに与える影響を「移行リスク」と「物理的リスク」として、試行的にリスク計量を実施し、総合リスク管理委員会に定期的に報告しており、2023年度には取締役会への報告も開始しました。
「移行リスク」については、TCFD提言指摘のセクターを踏まえて対象セクターなどを選定し、当該リスクの影響を債務者格付、資産価値などに反映の上、モンテカルロシミュレーションを実施してリスク量を計測しています。
「物理的リスク」については、自然災害による被害が発生している特定の事業資産(太陽光発電など)について、統計的なシミュレーションにより想定される最大損失をリスク量として計測しています。