気候変動への対応とTCFDへの賛同
気候変動への取り組み
東京センチュリーグループは、「高い専門性と独自性を持つ金融・サービス企業として、事業の成長に挑戦するお客さまとともに、環境に配慮した循環型経済社会の実現に貢献」することを経営理念に掲げています。「環境に配慮した循環型経済社会の実現」に向けて、当社は気候変動への対応を重要な課題として認識し、SDGsに対応するマテリアリティ(重要課題)を特定し、取り組みを進めております。
当社は、2021年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース*(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、気候変動に係るリスク重要度評価分析の結果から、環境・エネルギー事業(太陽光発電事業)〔2021年5月〕、航空機事業(航空機リース事業)〔2022年4月〕、およびオートモビリティ事業(法人・個人向けオートリース事業)〔2023年4月〕を対象に、TCFD提言に沿って、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)により公表されている「持続可能な開発シナリオ(1.5℃を含む2℃未満シナリオ)」、「新政策シナリオ(4℃シナリオ)」などの複数のシナリオを用いた気候変動リスクおよび機会の特定と、定性的・定量的な事業インパクト評価を実施しました。
当社は引き続き、太陽光発電事業などの再生可能エネルギー事業をはじめとする事業活動を通じたサステナビリティ経営を推進し、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、今後もTCFDのシナリオ分析対象事業の拡大と分析精度の向上を通じて、リスクへの対応策と機会の獲得について検討を深めてまいります。
- ※Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)
G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務 情報開示タスクフォース」を指す。2017年6月に、気候変動に対する企業の取り組みについての情報開示についての提言を公表。
ガバナンス
東京センチュリーグループは、気候変動関連のリスクや機会を含むサステナビリティ経営戦略について、全社サステナビリティの企画・推進・総括を所管する「サステナビリティ委員会」にて審議・報告する体制を整え、重要課題は経営会議および取締役会へ報告・審議するガナバンス体制を構築しています。
「サステナビリティ委員会」は、経営企画部門長が委員長、関係役員・部門長等が委員を務め、経営企画部門サステナビリティ推進部が事務局となり、原則年に2回開催。取締役会の監督の下、サステナビリティ経営のPDCA強化を図っています。
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気候変動対応に係る主な議案(2022年度) | |
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取締役会・経営会議 |
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総合リスク管理委員会 |
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サステナビリティ委員会 |
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関連ページ
戦略
東京センチュリーグループは、自社にとっての重要度とステークホルダーにとっての重要度から策定したマテリアリティマップを使用して、気候変動への対応を含む、SDGsに対応する5つのマテリアリティ(重要課題)を決定のうえ、パートナー企業と協働し、社会の持続的な発展に貢献する事業を推進するサステナビリティ経営を進めています。
SDGsに対応するマテリアリティ(重要課題)
関連ページ
「気候変動」は、グローバル社会が直面している最も重要な社会課題であり、東京センチュリーグループのマテリアリティにおいても「脱炭素社会への貢献」として重要な経営課題の一つと認識しています。東京センチュリーグループでは、事業セグメントの中で気候変動リスクが特に高い事業について、ステークホルダー及び当社の視点からリスク重要度評価を実施。検証の結果、「環境・エネルギー事業(太陽光発電事業)」(2021年5月)、「航空機事業(航空機リース事業)」(2022年4月)、および「オートモビリティ事業(法人・個人向けオートリース事業)」(2023年4月)を対象にシナリオ分析を行いました。
リスク重要度評価について
なお、シナリオ分析についてはTCFD提言に準拠し、以下4つのプロセスに沿って実施しております。
シナリオ分析対象事業の主な気候変動リスク
- 「環境・エネルギー事業(太陽光発電事業)」に関しては、台風・豪雨等の異常気象による緊急性の物理的リスクおよび炭素税の導入・法規制の強化といった移行リスクについて認識。
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項目 内容 分析の時間軸 リスク 機会 対応策 政策/規制
(移行リスクと機会)再エネ等補助金政策 2040 - FIT制度終了までの間にグリッドパリティを達成できない場合、事業の収益性が悪化する可能性
- より厳しいCO2排出削減政策がとられ、FIT制度を活用して今後も事業拡大の機会が長く提供
- アセット・マネジメント・ノウハウの蓄積を通じた、発電効率の最大化
- コーポレートPPA、自己託送モデル、VPP等の新規事業開拓
- 太陽光以外の再生可能エネルギー事業の検討
業界/市場
(移行リスクと機会)エネルギーミックスの変化 2040 - エネルギーミックスの変化により、再エネ発電事業者が増え競争環境が激化
- 販売価格の下落などが発生する可能性
- 日本は2030年までに電力販売における非化石電力の割合を44%にすることを規定しており、再エネ発電の機会は拡大
急性
(物理的リスクと機会)異常気象の激甚化 2040 - 豪雨・洪水・台風によって起こる従業員・発電所への被害から、操業停止・稼働率低下・設備の復旧への追加投資などが発生
- リスクの高い土地にある資産に対して、保険料等のコストが増加する可能性
- 知見の蓄積によりレジリエントな設備を開発する事ができれば、外部に出すことで新たな機会に繋がる
- 「航空機事業(航空機リース事業)」に関しては、異常気象の激甚化の影響により被る物理的リスク、および各国の炭素排出目標や航空業界独自の規制といった移行リスクを認識。
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項目 内容 分析の時間軸 リスク 機会 対応策 政策/規制
(移行リスクと機会)航空業界独自の規制(CORSIA) 2050 - 基準を満たさない航空会社への融資やリースに制限が課される可能性
- 次世代機※1の十分な確保による収益機会の増加
- リース先の分散・拡大、および次世代機へのアセット入れ替えによるポートフォリオリスクの低減
- 保有機体の早期売却と収益向上を実現する資産回転
ビジネスの拡充 - 保有機体売却後の機体管理を担うアセットマネジメント事業の拡大
技術
(移行リスクと機会)次世代機※1・新世代機※2の普及 2050 - 現在の次世代機※1の価値は急速に下落する可能性
- 保有する新世代機※2の割合が大きければ収益増・保有資産の価値上昇の可能性
- ※1次世代機:燃料効率化・機体軽量化等による低炭素機体
- ※2新世代機:BWB(Blended Wing Body)旅客機、代替燃料対応機、電動航空機、水素航空機等
- 「オートモビリティ事業(法人・個人向けオートリース事業)」に関しては、異常気象の激甚化の影響による物理的リスク(洪水・大雨の影響による車両生産の遅延等)、およびガソリン車・ディーゼル車からEVへシフトすることに伴う移行リスク(給油から充電への変化等)を認識。
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項目 内容 分析の時間軸 リスク 機会 対応策 政策/規制
(移行リスクと機会)炭素排出目標、省エネ政策 2040 - EVへのシフトが進むことにより、ガソリン車・ディーゼル車の中古価格が下落する可能性
- 中古EVへの需要が高まり、リース満了後の中古EV価格が上昇
- 新たなEV関連サービスの提供(法人向け・個人向け)に向けたバリューチェーンの強化
- EVに対応した適正なメンテナンス体制の確立
- グリーンボンド発行等によるEV調達時の優遇金利の活用拡大
- ガソリン車・ディーゼル車・EVの中古車相場の変化に対するモニタリング強化と適正な残価設定
業界/市場
(移行リスクと機会)顧客行動の変化 2040 - 顧客の環境意識が高まり、ガソリン車・ディーゼル車の需要が減少する可能性
- 顧客の環境意識が高まり、EVリースの需要が高まる
業界/市場
(移行リスクと機会)製品およびサービス 2040 - ガソリン車・ディーゼル車に比べ、部品点数の少ないEVが普及することにより、メンテナンス収益が減少する可能性
- EVへのシフトにより、充電サービスや、中古EVバッテリーの二次利用ビジネス等、新たな収益機会が発生
急性
(物理的リスクと機会)異常気象の激甚化 2040 - 洪水・大雨の影響により車両生産の遅延やリース車両が浸水する可能性
シナリオ分析詳細
シナリオ分析の対象事業別実施内容は、以下のリンクよりご確認ください。
リスク管理
東京センチュリーグループは「リスク管理の基本方針」を定め、経営に重大な影響を与える可能性のある全社的なリスクについて、リスクの把握・評価、必要に応じた定性・定量それぞれの面から適切な対応を行うため、総合リスク管理委員会を設置し、総合的なリスク管理を実施しています。
リスク管理の基本方針および総合リスク管理規程に定めるリスクカテゴリーについて、当社グループの業務内容の年次経年変化を評価し、影響度と発生頻度とのマトリクスによって、リスクヒートマップを作成しています。「気候変動リスク」については、非財務のリスクカテゴリー「オペレーショナルリスク」の一つに位置付け、リスクヒートマップ上にマッピングしています。
「気候変動リスク」を含むオペレーショナルリスクに関しては、年2回、「非財務情報のリスク指標」として総合リスク管理委員会を通じて取締役会にモニタリング結果を報告する体制を構築しています。
なお、「気候変動リスク」に関しては、当社グループの与信ポートフォリオに与える影響を「移行リスク」と「物理的リスク」として、試行的にリスク計量を実施し、総合リスク管理委員会へ定期的に報告しています。
「移行リスク」については、TCFD提言指摘のセクターを踏まえて対象セクター等を選定し、当該リスクの影響を債務者格付、資産価値等に反映の上、モンテカルロシミュレーションを実施してリスク量を計測しています。「物理的リスク」については、自然災害による被害が発生している特定の事業資産(太陽光発電など)について、統計的なシミュレーションにより想定される最大損失をリスク量として計測しています。
関連ページ
指標と目標
東京センチュリーグループは、2022年9月に「2040年度カーボンニュートラル方針」を公表しました。当該方針は2040年度のカーボンニュートラル達成を目指すものであり、当社グループのGHG排出量の約98%を占める周南パワー株式会社(連結子会社)が保有するバイオマス混焼発電所のトランジション・ロードマップを含む内容となっています。なお、同トランジション・ロードマップは、株式会社日本格付研究所(JCR)からクライメート・トランジション・ファイナンス・フレームワーク評価「Green 1(T)(F)」を得ています。
また、東京センチュリーグループは「環境基本方針」に基づき、ISO14001に準じた環境マネジメントシステム(EMS)を導入し、環境負荷低減に取り組んでいます。
オフィス活動を通じた環境貢献、再生可能エネルギー事業の推進等、事業活動を通じた環境貢献について環境目標を設定し、年間のCO2排出量を算出のうえ継続的に管理しています。2022年度の電気使用量※は27,147千kWh、CO2排出量(マ―ケット基準)は11,972t-CO2、太陽光発電事業(京セラTCLソーラー合同会社他8社)による年間発電量は537千MWh、CO2の削減貢献量は208千t-CO2でした。
- ※EMS適用範囲の会社に、データを管理している国内連結子会社を加えた会社が対象。