Our Strategies for Sustainable Growth
経営企画部門長メッセージ
規律あるポートフォリオマネジメントを通じた資本収益性の改善と利益成長にこだわり、持続的な企業価値向上を目指します。
平崎 達也
取締役 専務執行役員 経営企画部門長 兼 経理部門長
「中期経営計画2027」(以下、中計)の2年目となる2024年度は、主要施策である既存事業のバリューアップや資産回転などによる収益性の改善が進み、当期純利益は853億円と2期連続で過去最高益を更新し、ROEは9.0%と前期比0.2pt向上しました。2025年度の当期純利益予想は、930億円を見込んでおり、中計の財務目標である2027年度純利益1,000億円達成に向け、順調に進捗しています。一方で、2024年度は、当社の成長ストーリーに合致し、かつ期待するリターンが見込める成長投資を十分に実行できなかった点は課題として残りました。
連結業績推移
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| (億円) | 2023年度 実績 | 2024年度 実績 | 前期比 | 2025年度 予想 |
|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 1,173 | 1,323 | +150 | - |
| 親会社株主に帰属する 当期純利益 |
721 | 853 | +131 | 930 |
| セグメント資産残高 | 57,204 | 60,599 | +3,394 | - |
| 自己資本 | 8,722 | 10,296 | +1,574 | - |
| 総資産純利益率 (ROA) |
1.2% | 1.3% | +0.1pt | - |
| 自己資本当期純利益率 (ROE) |
8.8% | 9.0% | +0.2pt | - |
企業価値向上に向けた資本・財務戦略
PBRの向上とROEの改善は、株主・投資家の皆さまに対する当社の重要なコミットメントです。
PBR1倍超への早期の回復とさらなる向上、ROE10%超、かつ正のエクイティ・スプレッド形成に向け、企業価値向上施策の両輪である「資本収益性の向上」と「株主資本コストの低減」を軸に資本コストや株価を意識した経営を推進していきます。
「資本収益性の向上」については、事業ポートフォリオの強化が不可欠です。既存事業が創出するキャッシュに加え、低効率資産の戦略的なEXITにより得た資金を収益性の高い成長投資分野へ投資するとともに、資産回転率を高めることで、持続的な当期純利益の増加とROE向上を実現します。
そして、もう一方の軸である「株主資本コストの低減」に向けては、非財務資本の強化に注力します。リスクマネジメント態勢の高度化、人的資本経営の推進、透明性の高いIR活動の強化を通じて、市場からの信頼と適正な評価を得てまいります。
また、当社は、成長ステージにあります。したがって、成長投資に振り向ける資本を減らす「縮小均衡」は想定しておらず、あくまで資本効率を高めて「稼ぐ力」の強化を目指します。これらの具体的な施策について現在の認識を踏まえながらご説明します。
PBR1倍以上へのTransformation
資本コストと株価を意識した経営に向けた現状認識
「以前のような市場を驚かせるニュースが少なくなりましたね」。これは、私が2024年に面談した投資家からいただいたコメントです。この投資家は2009年の合併以降、コロナ禍までPBRが概ね1倍超で推移していた当社とPBRが1倍割れとなった当社を比較したのです。
当社は祖業のファイナンス・リースから自動車、不動産、船舶、航空機などの「モノの価値」に依拠した事業領域に活路を見出し、M&Aを積極的に活用することで同業他社と差別化したビジネスモデルを発展させ、順調に業績を拡大してきました。世界各国のエアラインを顧客に持つ米国航空機リース会社のAviation Capital Group(ACG)の連結子会社化やNTTグループとの資本業務提携とこれに伴う合弁会社NTT・TCリースの設立は、象徴的な成果と言える取り組みです。
しかし、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻などを契機に、地政学リスクをはじめとする潜在リスクが顕在化し、2020年度から2022年度にかけての減損・貸倒などの損失は、2022年度のACGにおけるロシア関連損失575百万米ドルを含め、合計約1,600億円にも上りました。
これらの損失や航空機市場価格の下落などが重なり、当社グループの総合リスクマネジメント(ERM)における重要リスク指標である資本利用率(総リスク量/連結経済資本)は、ガイドラインのソフトリミットである75%の水準まで上昇、この状況を受け、リスク管理態勢の強化と資産ポートフォリオの健全性確保を優先しました。加えて、M&Aマーケットの変化により、当社の期待収益水準に見合う案件は限定されました。これらの要因により、一時的に成長投資が抑制された結果、市場からの成長期待の低下を招き、近年のPBR1倍割れの要因の一つになったと分析しています。
「中期経営計画2027」で目指すROEおよびPBRの水準
ACGの損失に関して、保険会社に保険金の支払いを求めていた米国カリフォルニア州における訴訟は、2025年度に和解契約を締結するに至りました。これにより、2025年度決算において、当初の損失額の約95%にあたる545百万米ドル相当を特別利益として計上する見込みです。
ロシア関連訴訟の保険和解金の状況※1
- ※12025年9月末時点
- ※2米国カリフォルニア州において訴訟対象であった戦争保険引受先の全保険会社との合意金額
資本コストへの意識を組織全体に浸透させ、資本とリスクの最適なアロケーションを図る
中計目標であるROE10%の達成とさらなる向上には、単なる資産規模の拡大ではなく、より収益性の高い事業ポートフォリオへの変革が必要です。そのため当社は、資本コストとリスク・リターンを反映した指標であるROICスプレッドを重視していきます。2025年度からはその一環として、事業分野ごとの業績評価体系にも導入しました。当社の事業構造を踏まえながら、各事業分野にROICスプレッド(ROIC>WACC)の創出を求めます。これにより、各事業分野の資本効率への意識を高め、全社的なROE向上を目指します。この資本配分の考えのもと、当社は既に事業ポートフォリオの最適化を加速させています。特に、データセンター、蓄電池、プリンシパル・インベストメントといった事業は、高いROICスプレッドと将来のキャッシュフロー創出が期待できる領域であり、事業拡大を推進していく考えです。
ROICの向上とROICスプレッド(ROIC-WACC)の拡大
「稼ぐ力」の持続的強化に向けた挑戦
成長を牽引する事業ポートフォリオの構築に向けては、これまで当社が磨き上げてきた「モノ価値の目利き力」と、当社独自のコアコンピタンスである「パートナーシップ」という、2つの強みを掛け合わせた価値創造モデルを、さらに深化させる必要があります。これまで当社は、パートナー企業の知見と当社のモノを軸とした金融・事業・投資に関するノウハウを融合させ、事業の潜在価値を最大化するアプローチに基づき、NTTグループや伊藤忠商事など当社の注力事業と親和性の高いビジネスを展開する有力なパートナー企業とともに事業を創出してきました。
具体的な取り組み分野としては、社会インフラの領域が挙げられます。通信を中心にさまざまなインフラ事業を手掛けるNTTグループと米国・インドで共同展開しているデータセンターは、今後の高い成長が見込まれるデジタルインフラ分野であり、NTTグループの知見と当社のファイナンス機能を掛け合わせることで実現した事業です。NTTグループとは、モビリティインフラの分野においても合弁会社である日本カーソリューションズ(NCS)を通じて長年にわたり企業活動における車両の安全・安心な運行を支えてきました。「100年に一度の変革期」にある自動車業界において、未来への布石を共同で打っています。自動運転技術をリードする米国May Mobilityへの出資は、来るべき自動運転社会を見据え、新たなビジネスモデルと収益機会を創出するための戦略的投資であり、オートモビリティ事業のさらなる拡大を目指しています。世界各国でトレーディングやインフラ事業などを展開する伊藤忠商事とは、米国の再生可能エネルギー事業を共同で手掛けています。データセンターなどの拡大により電力需要が増大している米国の電力インフラの構築を見据えた取り組みであり、今後も持続的な成長が期待できる分野です。今後もこうしたパートナー企業と当社の強みを活かせる領域での投資を積極的に探求していきます。
また、その他各事業においても「稼ぐ力」の強化に向けた取り組みが進捗しています。当社グループの祖業である国内リース事業分野においては、お客さまにリースをする「モノ」に保守・メンテナンス・通信といったサービスを付加することで、収益性は着実に改善傾向にあり、成果が出ています。
スペシャルティ事業分野においては、資産回転の施策が進捗しています。ACGでは、機齢の進んだ航空機を適切なタイミングで売却し、より収益性の高い新造機へ入れ替える資産回転に注力したことでROAが改善しています。
成長市場である蓄電池事業では、他社に先駆けて開発を進めています。特に、事業の鍵となる事業用地と電力系統の接続枠を確保し、早期の運転開始に向けて優位なポジションを築いています。自然条件に左右されやすい再生可能エネルギーの普及に伴い、電力安定化に貢献する蓄電池の需要は今後ますます高まります。将来の発展が予想されるこの事業領域で先行者利益を確実に獲得し、脱炭素社会の実現を支える中核事業として拡大させていきます。
当社が開発する系統用蓄電池の出力
M&Aの活用とリスク管理体制の強化
個別案件の積み上げも大事ですが、事業成長のスピードを上げるため、M&Aも積極的に活用していきます。投資先企業の選定にあたっては、戦略の整合性や投資リターンの妥当性に加え、ガバナンス体制も重要な判断基準としています。
健全な成長投資の実現には、適切なリスクテイクの促進が必要です。当社として、選好し許容できるリスクの種類と量やそれに伴うリターン、さらには資本利用率など、財務の健全性を統合的に管理するフレームワークの構築など、リスクマネジメントの高度化に取り組んでいます。こうして、資本・リスク・リターンを三位一体でモニタリング・管理することで、持続的な事業成長と健全な事業ポートフォリオの構築を実現していきます。
資本・リスク・リターンの三位一体のコントロール
キャッシュフロー・アロケーションと株主還元
リスクマネジメントを徹底しながら最大限のリスクテイクを行い、持続的な成長を目指していくことがキャッシュフロー・アロケーションの根本的な考え方です。現在は成長投資のパイプラインが充実しており、創出したキャッシュフローは優先的に成長投資に振り向けていきます。株主還元については、配当性向35%を目途に、利益成長に合わせて累進的に還元額を着実に向上させていきます。2024年度は、利益成長により前年比19%増加の62円(前年比+10円)となりました。今後も持続的な成長投資による企業価値の増大と、それに連動した株主還元の充実を両立させることで、株主の皆さまのご期待に応えていきます。
配当金・配当性向の推移
- ※2024年1月1日を効力発生日とし、普通株式1株につき4株の割合での株式分割を実施しました。1株当たり配当金は、株式分割の影響を遡及修正した数値を記載しています。
今後の成長を支える組織体制の整備・人的資本の拡充
当社はこれまで、M&Aや既存事業の拡大のため、営業部門へ経営資源を優先的に投下し、利益成長を実現してきました。しかしその一方で、成長を支えるコーポレート機能の整備が追いついていない点が課題でした。企業価値をさらに向上させ、次の成長ステージへ移行するためには、コーポレート基盤の高度化が必要です。課題はいくつかありますが、その一つである業務オペレーションの高度化においては、AIの積極的な活用を推進しています。当社はこれまでもAIの導入を段階的に進めてきましたが、2025年4月にその取り組みを加速させるべく、Google社の生成AI「Gemini」および「NotebookLM」を全社で導入しました。導入後、従業員の自律的な活用が促進され、現在の利用率は全従業員の約80%に達するなど、短期間で浸透しております。これにより、情報収集や資料作成といった定型業務が大幅に効率化され、より創造的で付加価値の高い業務へ注力できる環境が整備されつつあります。
今後は、課題であるコーポレート機能におけるAIの利活用をさらに深化させ、業務効率と業務の質の向上を目指していきます。
人的資本の拡充に向けては、中計においても「人材確保・育成に向けた投資として8億円以上」というKPIを掲げ、人的資本への投資を本格化しています。現在、事業内容の高度化・多様化に対応するため、多様な経験や高度な専門性を有する人財を惹きつけ、その活躍を最大化するための人事に関する諸制度の見直しも必要と考えています。
また、全社的な取り組みとして従業員エンゲージメントの向上も重要な指標と捉え、継続的な施策に取り組んでおり、2024年度のエンゲージメントスコアは56.2(偏差値)と、前年度比で3.0ポイントの改善を達成しました。特筆すべきは、全128の設問項目においてスコアの低下が一切見られなかった点であり、これは各種施策が部門を問わず全社的に浸透し、広範な改善につながっていることを示していると考えています。今後も、これらの客観的データを活用した各部門での対話を通じて、強みの伸長と課題の克服を繰り返す改善サイクルを回し、従業員一人ひとりが挑戦する組織を構築していきます。
株主資本コスト低減に向けたIR活動の強化と、株主・投資家の皆さまに対するメッセージ
持続的な企業価値向上を実現する上で、株主資本コストを当社のROEを下回る水準に抑制し、正のエクイティ・スプレッドを創出・拡大し続けることは、私の責務です。この目標達成に向けた資本市場の皆さまとの対話は経営において重要であると認識しています。
2024年度は、皆さまとの対話機会を質・量ともに拡充することに注力しました。年間延べ250件を超える個別ミーティングを継続的に実施することに加え、投資家・アナリストの皆さまから高い関心をいただいているACGの事業説明会を開催しました。この説明会では、ACGのCEOであるトム・ベーカーが米国カリフォルニア州ニューポートビーチ本社よりオンラインで登壇し、事業の収益性改善策や今後の成長戦略について直接ご説明しました。これは、当社グループの重要事業に関する透明性を高め、事業会社のトップマネジメントが直接説明責任を果たすという、我々の想いの表れでもあります。
オンラインによるACG事業説明会
こうした日頃の皆さまとの対話から得られる貴重なご意見や客観的なご指摘は、定期的に取締役会および経営会議へフィードバックしています。これらは、経営戦略の高度化に資するだけでなく、経営の監督機能の実効性を高める上でも重要なインプットであると考えています。
今後も、皆さまの的確な投資判断に資する情報開示を徹底し、経営の透明性を高め、信頼していただける会社でいられるように努めていきます。
引き続き、当社グループへの変わらぬご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。