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機関投資家 × CEO対談
投資家の皆さまとの対話から得た自社の課題を経営に反映することで投資家の皆さまとともに東京センチュリーの新たな価値と未来を共創する。
- 籔谷 和子
- シュローダー・インベストメント・マネジメント
日本株式アナリスト - 藤原 弘治
- 東京センチュリー
代表取締役社長
投資家から見た東京センチュリー、株式市場の期待に応えるために
- 籔谷
かつて、東京センチュリーの株価が好調だった時期を振り返りますと、ROE10%超、PBR1倍超で、株式市場から高く評価され、貴社の「変化率の高さ」とビジネス拡大の可能性に対する期待がありました。しかし、ACG買収後、新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアによるウクライナ侵攻などの影響を受け、利益のボラティリティが高まり、下方圧力への脆弱性が表れたことで、投資家の期待とは異なる方向へ進んでしまったと認識しています。投資家として、藤原社長には長期的な視点で施策に取り組み、東京センチュリーを変革していただくことを強く期待しています。社外取締役のご経験を経て今回社長に就任されましたが、現在の東京センチュリーをどのように捉えていらっしゃいますか。また、東京センチュリーをどのような会社にしたいとお考えか、ご所信をお聞かせください。
- 藤原
私が40年間身を置いた銀行の世界と比較すると、当社は「非規制業種」であり、自由闊達にビジネスを進化させてきた歴史を持ちます。社外取締役として見てきた当社の「高い潜在力」を、社長としてどのように顕在化させるか。社長に就任し、この「潜在力」の詳細や解像度が高くなった今、それを顕在化させるための「発想の転換」が必要だと感じています。当社の力を真に発揮するためには、事業・サービスを生み出していく挑戦者としてのマインドチェンジが必要です。
競争が激化する現在の経営環境において、独自の価値を創出し、次の10年を飛躍の年とするために、私は新社長として「地球規模の社会課題を解決に導く永遠のベンチャー企業」を目指し、経営改革を力強く推進していきます。現代社会には、地政学リスクや国内外の経済動向、環境問題、人口減少、AIへの対応など数多くの課題が存在しており、当社が持つ強みを活かし、日本のみならず世界全体の多様な課題を解決していきたいと考えています。例えば、安全で効率的な社会の実現に向けた自動運転の普及、AI活用に起因する世界的需要に対するデータセンター開発、IT機器の適正処理と再利用を実現するITADなど、脱炭素社会・循環型社会の実現に貢献し、ビジネスを拡大できる分野は数多くあります。
当社独自の強みを活かしてプレゼンスを発揮するために、まずパーパスドリブンで独自の「エクイティストーリーの戦略ピラミッド」を構築し、ステークホルダーの皆さまに成長の道筋を明確にお示しすることが必要だと考えています。一貫したエクイティストーリーのもと、目指す企業像から逆算してポートフォリオのあり方や人財育成、経営基盤強化といった戦略を策定・共有・実行することで、皆さまに当社のビジョンと成長性をご理解いただきたいと思います。「その挑戦に、力を。」というスローガンのもと、パートナー企業とともに挑戦するカルチャーの醸成をさらに加速させていきます。
- 籔谷
仰る通り、貴社のユニークさを前面に押し出して他社との差別化を図っていただくことが重要だと思います。藤原社長には、確かな成長戦略への変革を期待します。
ポートフォリオ改革とキャピタル・リサイクリングによる資本効率の向上
- 籔谷
「中期経営計画2027」は順調に進捗しており、現時点で前倒しの達成も視野に入る水準にあると評価しています。一方、ROEやROAといった資本効率の面では、目標といまだ乖離がみられるセグメントが存在するのも事実です。これまでも、資本効率を踏まえた事業ポートフォリオの構造改革について打ち出していましたが、具体的な進展があったとは言えません。市場は、従来の資産売却によるキャピタルゲインではなく、「戦略的なキャピタル・アロケーション」を期待しています。資本効率と成長性の最適なバランスの実現に向け、利益成長や事業ポートフォリオの構造改革を具体的にどのように進めていかれるお考えでしょうか。
- 藤原
ご指摘の通り、さらなる成長の実現のために今やるべきことは経営の視座を高め、10年後を見据えたビジョンを描くことが重要であると思っています。そのためにまず、現状を正しく把握することが不可欠です。これまでの当社は資本効率に対する意識が十分とは言えませんでしたが、今後はROE、ROIC、キャッシュフローに対し、一層強い意識を持つ必要があります。管理会計の高度化を進め、資本効率を念頭に置いた成長投資や縮小・撤退を迅速に判断できる仕組みを整えます。経営資源の配賦を可視化し、成長の実現に向けては「ホワイトスペース」への投資も強化します。特にM&Aは「非連続な成長」を可能にする重要な手段と捉え、戦略の整合性、投資リターンの十分性、ガバナンスなどをしっかり見極め、規律ある投資を実行していきます。また、こうした戦略を実効力あるものにするため、組織設計は戦略に導かれパーパスドリブンに決定されるべきであるという考えのもと、現在の事業分野を軸とした構造における連携不足についても見直します。まずは、「どういったプロダクツやサービスを、どこで、誰に対し、どのように提供するか」を整理し、その実行に最も適した組織の最適解を探求することで、改革の効果を最大化していきます。
- 籔谷
管理会計プラットフォームの整備によってデータに基づいた経営判断が可能となれば、キャピタル・リサイクリングの実践も加速されるものと期待しています。
- 藤原
仰る通り、キャピタル・リサイクリングによる資産の戦略的な入れ替えは、今後の事業運営に不可欠です。各事業の収益性・将来性を見極めながら、経営資源の配分を含めたポートフォリオの聖域なき改革を進めていきます。ポートフォリオ構築においては事業間の相互補完性も重視し、総体としてマクロ経済の変動や不測の事態に強く、コングロマリット・プレミアムの創出を目指します。東京センチュリーのビジネス全体を一貫したエクイティストーリーでつなげることが私の使命です。
成長ストーリーの実現に向けた基盤構築
- 籔谷
投資家としては「中期経営計画2027」の先、5年、10年のスパンで東京センチュリーをどこまで成長させられるかが焦点になると捉えています。長期的成長を実現する上ではキャピタルライトなビジネスモデルへの転換が鍵になるかと拝察しますが、変革の担い手である人材力についてはいかがでしょうか。投資家目線では、部長クラスから第2新卒まで幅広く中途採用を活用されている点は評価できる一方、女性活躍の進捗である管理職に占める女性比率の2030年度30%目標について目標と進捗に乖離があることや、役員層におけるバックグラウンドなどのダイバーシティが十分でないことが課題に映ります。藤原社長の評価をお聞かせください。
- 藤原
私はこの10年で当社の存在感と信頼感をさらに高めて、これまでと次元の違う東京センチュリーにしたいという強い想いを抱いています。収益性、資本効率を本質的に改善するためには、仰るようにキャピタルライトな事業構造への転換は不可欠だと考えており、付加価値のあるサービスの提供力を高めることなどを通じて、フィービジネスやアセットマネジメントなどを拡大していきます。当社には、業界を熟知した伸びしろのある人財が数多くいると評価していますが、新たな挑戦に向けて、意識の改革が必要です。当社は銀行では対応できない事業・サービスや商社などとの競合が少ないニッチ領域へ事業を展開することができます。この強みを活かすためにも、リース時代の「顧客ニーズにファイナンスで応える」という受け身の姿勢を脱し、ファイナンス周辺の領域やニッチながらも魅力あるビジネスを自ら察知する鋭い嗅覚を鍛えて、事業やサービスで勝負していく必要があります。また、AI技術などを積極的に導入して属人的な「暗黙知」を「組織知」へと昇華させ、組織全体の力を高めていきます。新しく、かつ他社が取り扱わない領域へチャレンジし、東京センチュリーが社会イノベーションの起点となる面白い会社になれば、従業員にとっても魅力的な会社になるはずです。
ダイバーシティについては、多様な価値観や発想を企業の成長に活かす、という本質に立ち返り、然るべき環境整備を進めていきます。
中途採用はご評価いただいた通り積極的に推進しており、多様なバックグラウンドを持つ人財が増えていることでダイバーシティが広がっていることに可能性を感じています。一方、女性活躍については、今後特に注力し、バックアップ体制強化を推進する方針です。また、自ら考えリーダーシップを発揮できる経営人材の育成を目指し、若手をリーダーに登用したプロジェクトも進めています。
- 籔谷
貴社のパートナー戦略については独自の強みとして高く評価しており、パートナー企業と共同でのIRイベント開催は提携の深さを物語っていると感じます。投資家としてはパートナー戦略のさらなる拡大と情報開示の高度化にも期待したいところですが、戦略や利益貢献についてよりわかりやすく開示するためには何が必要とお考えでしょうか。特に、過去の投資に対する評価とリターンについてはぜひ可視化していただきたいと思います。
- 藤原
ご評価をいただきありがとうございます。パートナー戦略については、さまざまなパートナーシップを有する当社ならではの強みを活かし、さらにビジネスを拡大する余地があると考えています。各パートナー企業との連携強化や社内体制の最適化を通じて、さらなるパートナーシップの深化を推進します。
また、情報開示の高度化は我々の成長ストーリーをご理解いただく上で不可欠な要素です。今後は、過去の投資の成果をお示しするだけではなく、投資の戦略的な位置付けや提携によって事業がどのように成長していくのかというプロセスを具体的にお示ししたいと思っています。こうして、皆さまの信頼を高め、「エクイティストーリー」全体の説得力を向上させていきます。また、パートナー戦略につきましては、経営トップである私自身がパートナー各社と深く連携し、共同事業による将来の成長見通しなど、これまで以上にわかりやすい情報開示に取り組みます。
投資家から見た東京センチュリーの継続課題
- 籔谷
貴社における継続課題として、株式流動性の改善が挙げられます。株式流動性の低さは株価の抑制要因の一つであり、長期的な視点で改善を求めていきたいと考えています。資本政策に対するお考えはいかがでしょうか。
- 藤原
株式の流動性が低く、投資家の皆さまにとって投資しにくい状況であることは、課題の一つとして認識しています。短期的な解決は難しい課題ですが、だからこそ主要株主との関係性を最大限に活用し、シナジーをしっかりと実現していかなければなりません。資本政策は、成長投資、リスクバッファー、株主還元の最適なバランスを追求することが肝要です。強固なエクイティストーリーをご説明することで、当社の成長に対する期待感を醸成し、成長投資を優先する考えに対しご理解いただけるように尽力します。
- 籔谷
そのほか、ガバナンスの側面として、社外取締役との面談機会を設けていただきたいと考えています。株主構成に特徴のある貴社では、社外取締役が少数株主の意見を適切に代弁しているか、良い意味での「批判者」として会社に対して必要な提言をしてくれる存在であるかが、極めて重要だと考えます。
- 藤原
仰る通りです。当社の社外取締役は、独立した視点から経営への監視や有益な提言を行っています。今後は、投資家の皆さまと社外取締役との対話機会を設けられるよう、検討していきます。
東京センチュリーの潜在力を引き出すことが私の使命です。
経営者の仕事は結果を出すことであり、 必ずやり遂げます。
藤原 弘治
対話で築く、未来の企業価値
- 籔谷
我々は長期のアクティブ投資家として企業の応援団となり、他社の好事例やグローバル市場の知見を提供することで企業価値向上に貢献したいと考えています。
- 藤原
今回の対談を通じて、改めてステークホルダーの皆さまとの対話の重要性を強く認識しました。私自身が前職でIR部長を務めていた時代から、私はIRの役割はステークホルダーの声を経営に反映させることだと捉えています。経営者として、このミッションを果たすべく建設的な対話を継続的に実施していきます。
まずは、東京センチュリーが目指す姿にご共感いただくことがスタート地点であると考えています。一本筋の通ったエクイティストーリーをお示しした上で、事業戦略や財務戦略、経営インフラの改革、人財戦略といった具体的な戦略がどのように紐付くかを可視化し、株主の皆さまに対し説明責任をしっかりと果たしていきます。
当社にはモノ価値を見極める目利き力や、素晴らしいパートナーとの協働力、金融・事業・サービスを束ねる総合力など、独自の強みが揃っています。「地球規模の社会課題を解決に導く永遠のベンチャー企業」への変革を成し遂げるために、全従業員が常に挑戦に向き合える企業風土を醸成し、当社の潜在力を引き出すことが私の使命です。経営者の仕事は結果を出すことと心得て、皆さまのご期待に必ずお応えしていきます。
- 籔谷
本日はありがとうございました。戦略の遂行と今後の飛躍を大いに期待しています。
ROEをはじめとする資本効率の改善は、投資家からの注目度が最も高い課題です。
低収益事業から成長分野へと資本を振り向ける、戦略的なキャピタル・アロケーションとポートフォリオ改革の実行を期待します。
籔谷 和子