Message from the President
- 藤原 弘治
- 代表取締役社長
Message from
the President
地球規模の社会課題の
解決を起点とした
エクイティストーリーにより
東京センチュリーの未来を拓く
地球規模の社会課題と東京センチュリーが目指す結節点
2025年4月、東京センチュリーの社長に就任しました。金融を起点としながらも、その枠を超えて事業やサービスをダイナミックに展開する当社の舵取りを任され、経営者として大きな喜びを感じています。
今、私たちは歴史的な転換点に立っています。地政学リスクは高まり、経済のブロック化が進み、国家間の緊張は増しています。今年の夏の猛暑で皆さんが感じたであろう気候変動は、もはや環境問題に留まらず、社会のあらゆる側面に深刻な影響を及ぼし、未来の世代の可能性をも奪いかねない待ったなしの課題です。加えてAIの進化と浸透は急速に進むなど、これまでにない多様な変化に、同時に直面しています。これらの変化は、単なる一時的なトレンドではなく、私たちの仕事のあり方、社会の構造、産業構造、そして個人の価値観にまで深く作用し、変革を迫っていくことになるでしょう。
日本は、こうしたグローバルな潮流に加え、独自の課題に直面しています。長年にわたる人口減少は、労働力不足や経済規模の縮小に、地方と都市の二極化は、社会の活力低下につながりかねません。さらに、約20年ぶりとなる政策金利の引き上げは、これまで当たり前だった「低金利の時代」に終止符を打ち、「金利のある世界」への適応を私たちに求めています。日本は、世界的な課題と国内の構造的課題が複雑に絡み合う、過去に類を見ない環境に置かれていると言えます。
この不安定、不透明、不確実の時代は、リスクを伴う一方、当社にとって、そして日本企業全体にとっても、変化の中に生まれるビジネスの芽・成長機会を捉える好機でもあります。
こうした中で、私は当社を地球規模の社会課題を解決に導く会社、その結節点となる会社にしたいと考えています。
東京センチュリーは、お客さまやパートナー企業とともに、新たな価値を創造していきます。私たちの使命は、単なる金融の提供者ではなく、社会課題の解決を支える存在であり続けることです。
地球規模の社会課題を解決に導く「永遠のベンチャー企業」
実現に向けたエクイティストーリー
社外取締役時代から、私は自問し続けてきました。「東京センチュリーとは、何者なのか」。かつては純粋なリース会社でしたが、今や「何でも屋」と称されるほどの多角的な企業グループであり、その活躍のフィールドはグローバルに広がっています。特に、課題先進国である日本は、世界の社会課題解決のフロントランナーとなるべき存在です。多くの社会課題を解決に導き、ありたい社会を実現する結節点として東京センチュリーが果たすべき役割を明確にする必要があると考えました。
そのような存在として確固たる地位を築き、かつ成長を両立させるためには、企業の存在意義を示すパーパスを頂点に置き、ビジョンを定め、そこから導かれる事業戦略、そしてそれを支える強固な財務基盤や経営インフラまで、すべてが一貫したストーリーとして流れていることが不可欠です。私は、この成長ストーリーこそが、企業価値向上の要であると考えています。
一見すると、当社グループの事業は多岐にわたり、一貫性がないように見えるかもしれません。グローバルに航空機リースを手掛け、日本国内ではレンタカーサービスを展開する。しかし、その根底には、社会課題解決への強い意志が流れています。例えば、環境性能に優れた次世代航空機の導入をリースによって後押しすることは、グローバルな移動に伴う環境負荷低減という社会的インパクトを創出します。また、稼働率の低い自家用車の代替手段として、オートリースやレンタカー事業を通じて自動車の有効活用を促し、サーキュラー・エコノミーの形成に貢献することも、社会にインパクトを持つ取り組みです。再生可能エネルギー事業や蓄電池事業についても、エネルギー問題の解決を通して地方創生に貢献できます。
このように、パーパスを起点とした、当社独自のエクイティストーリーという戦略ピラミッドを、いかに強固に構築できるか。私は常に問い続け、社長室のホワイトボードに手書きした戦略ピラミッドの実現性を、日々検証しています。この価値観に共鳴し、たとえ事業領域が違えども、重なり合う部分でともに汗を流せるパートナー企業との連携こそが、当社の強さの源泉です。
NTTグループや伊藤忠商事、および取引銀行とは、長年にわたる揺るぎないパートナーシップを築いてきました。中でもNTTとは、オートリース事業の協業からリース事業の合弁会社であるNTT・TCリースの設立、さらに足元では米国において大きな成長が期待されるデータセンター事業の共同運営を進めています。また、伊藤忠商事とも再生可能エネルギー領域における国内外での協業や米国でのキャプティブファイナンス会社の設立など多岐にわたる分野で連携を強めています。
パートナーと共同で展開するビジネス事例(NTTグループ、伊藤忠商事)
さらに富士通や三菱地所、京セラ、NXグループといった各領域における有力な企業とも強いパートナーシップを有しています。例えば、富士通とは多くの企業で課題となっているモダナイゼーションを一層推進させるためのファイナンス・サービスの提供を開始しました。これらのように日本を代表するグローバル企業との協働においても、東京センチュリーは独自のポジションを築いていると自負しています。当社自身も、絶え間ない自己研鑽によってパートナー企業から頼られる存在であり続けます。そのためには「東京センチュリーが必要不可欠」と思われ、絶対的存在として、その専門性と知見を磨き上げることが不可欠です。パートナーが走り続けている中、当社に立ち止まっている余裕はありません。常に開拓者精神を忘れることなく、「永遠のベンチャー企業」として地球規模の社会課題を解決していきます。
株主資本コストを上回るROEを規律とし、
事業・サービス領域への本格シフトを加速
東京センチュリーの強みは、モノの本質的価値を見抜く「目利き力」、素晴らしいパートナー企業とともに新たな価値を創造する「協働力」、そして金融という枠にとらわれず、事業とサービスの展開を支える専門性の高い「人財力」、この3つです。これらのコアコンピタンスと規制に縛られない独自のビジネスモデルによって、成長を遂げてきました。
この当社ならではのビジネスモデルのポテンシャルを最大限に引き出し、社会課題の解決に貢献するとともに、事業ポートフォリオを今日的に再構築することこそが、当社の事業を未来へとつなげ、企業価値を持続的に高める礎になると考えています。そのためには、金融領域だけでなく、事業・サービス領域への本格的なシフトを進めることが経営課題であると認識しています。
東京センチュリーは、コングロマリット企業体です。「コングロマリット」という言葉は、時に「ディスカウント」という評価を想起させます。しかし、私はこれを「プレミアム」へと昇華させることが、経営者としての大きな挑戦であり、必ず成し遂げられると信じています。今後のポートフォリオ構築における指針は、2つです。一つは、当社が目指すべき企業の姿、すなわち社会的使命から導き出される「定性的な事業スクリーニング」。そしてもう一つは、その事業が持つ「稼ぐ力」という「定量的な視点」です。ROIC、潜在成長性、競争優位性、これらの指標を冷静に分析し、挑戦するに値する事業か否かを厳格に判断します。理念の追求と、株主資本コストを上回るROEを意識した経営の徹底、この2つの観点から、注力すべき事業と、見直すべき事業の選別を行い、着実に実行していきます。
前回の中期経営計画では、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢に起因する多額の損失を計上しましたが、その原因と真摯に向き合い、得られた貴重な教訓を糧に、各事業分野で資産回転を加速させ、収益力を強化してきました。その結果、現在では「中期経営計画2027」の最終年度目標である当期純利益1,000億円の達成が、目前に迫っています。しかし、当社はこの水準に甘んじるつもりはありません。私は、当社がこの先10年間で業界No.1をねらえる十分な潜在力があると確信しています。10年でできないことは100年経ってもできません。そのために株主資本コストを上回るROEを規律とし、具体的な成長戦略と市場にインパクトを与える道筋を力強く示していきます。
ホワイトスペースにおけるビジネスの創出と既存事業の付加価値向上により、
東京センチュリーのポテンシャルを最大限引き出す
成長投資分野として、お客さまにおける課題解決のニーズがあるものの、どの企業も十分なソリューションを提供できていないホワイトスペースに注目しています。
そのために、銀行や商社には踏み込めない、あるいは踏み込まない領域に果敢に挑戦し、当社の独自性と優位性を盤石にする、成長期待の高い事業ポートフォリオを構築します。銀行が取り切れないリスクを取る領域の開拓は、当社にとっての広大なビジネスチャンスなのです。商社は、大規模案件に正面から挑んでいます。ならば当社は、「グローバルニッチ」に勝機を見出します。そこには、未だ手つかずの社会的需要とビジネスチャンスが眠っています。銀行や商社が「できないこと」、そして「やらないこと」。そこにこそ、東京センチュリーの成長の源泉があるのです。
多くの有力な企業とのパートナーシップがある当社であれば、両社のソリューションを融合させた解決策を必ず提示することができます。例えばオートモビリティ事業です。EVシフトや自動運転という変革期において、当社グループのオートモビリティの領域に求められる役割は変化し、それはさらなる成長機会にほかなりません。自動車が生み出す膨大なデータをAIで解析し、新たなデータビジネスを創出することも可能です。オートモビリティ業界で確固たる地位を築く。それが東京センチュリーの目標です。
既に投資を実行しているデータセンタービジネスも、NTTグループをはじめとするパートナー企業とともに、将来の飛躍的な成長が期待されます。開発先行型のビジネスゆえに収益への貢献はこれからですが、米国のプロジェクトでは稼働後のキャッシュフローは極めて安定的かつ高いEBITDAマージンが見込まれています。
航空機ビジネスも、当社の成長を牽引する重要な柱です。航空機リースに留まらず、航空機のパーツ事業も展開しています。また、空港関連など周辺の領域にも大きなポテンシャルがあります。コロナ禍で割安なリース料で締結した契約の満了が、2026年から2027年にかけて進むことで、ROAは改善基調となりますが、それに満足せず、より一層の事業価値向上を追求していきます。
地球環境対策は、経営の重要課題の一つとして取り組みます。「環境に配慮した循環型経済社会の実現に貢献する」という当社の経営理念の実現は決して容易な道のりではありません。エネルギーの安定供給と環境配慮は、トレードオフの関係と捉える考えもあります。しかし、そのベクトルを中長期的にいかにして合致させるか。そこにこそ、結節点たる東京センチュリーが真価を発揮すべき領域があります。
当社は、再生可能エネルギーを支える蓄電池の事業開発を推進しています。国内では、再生可能エネルギーの供給量が急速に増加し、電力の需給調整の役割を担う蓄電池の需要が拡大しています。再生可能エネルギーと蓄電池の普及を推進するライフサイクルマネジメント関連事業は、社会に対して安定的に電力を供給するという社会インフラの役割を果たし、環境負荷の低減を実現します。
この環境関連事業を下支えするのが、AIをはじめとするデジタル技術です。戦略の立案、オペレーションの効率化、そして新たな可能性の発見。デジタル技術は、これらすべてを可能にします。実際に当社では、AI技術で発電所と蓄電池を最適運用する取り組みを既に導入済みです。この発展著しい技術をいち早く活用し、複雑な課題に対する最適な解決策を導き出す。そこに、当社の未来の可能性があると信じています。
東京センチュリーの未来を切り拓く飽くなき挑戦のマインドと知的好奇心、
バイタリティを持った人財の育成
当社が強みを活かし、次のステージを目指すには、事業・サービスに対する深い知見と、それを担う人財、そして何よりも旧来とは異なるメンタリティが不可欠です。金融は、お客さまの明確なリクエストに応える受動的な側面が強い業種です。一方、事業やサービスは、無から有を生み出す能動的な創造の営みです。そこでは、飽くなき挑戦のマインドと、他社の動向や時代の潮流を常に探求し続ける旺盛な知的好奇心、そして当社の強みをどこで活かすべきか嗅ぎ分けて実現するバイタリティが求められます。
また、挑戦をし続ける上で大切にしなければならないことは、成功体験ではなく、失敗から得られる学びです。成功に安住する者に、真のリーダーシップは宿りません。失敗を失敗のまま終わらせず、それを糧とし、教訓として自らを成長させ続けることが肝要です。そして「成功」の反対は「失敗」ではなく、「挑戦しないこと」です。これこそが、私が何よりも重視する姿勢であり、この考えを東京センチュリーの全役職員に深く心に刻んでほしいと願っています。私は全役職員に、果敢に挑戦することを期待します。そして、挑戦を称賛し、失敗を許容する文化を築き上げることこそが、経営者としての私の責務です。
私は、金銭的インセンティブ以上に、非金銭的インセンティブが人を動かすと考えています。自社のパーパスに深く共感し、自らの仕事が社会の役に立っていると実感できること。その結果として、社会から尊敬される組織の一員であること。現代の若い世代は、こうした価値に対して極めて高い感受性を持っています。だからこそ、経営者である私が自らの言葉で、当社の事業が持つ社会的意義について情熱を持って語り、会社全体に浸透させていく責任があります。
社長就任が内定して以来、私は当社の課題を徹底的に洗い出し、次世代を担うリーダーたちを責任者に据えた20のプロジェクトを始動させました。リーダー一人ひとりに、このプロジェクトに懸ける私の想いを直接伝えており、未来に向けた変革のエンジンは、既に力強く回転を始めています。このプロジェクトを推進する上で、私が大切にしていることは、多様な価値観や発想を企業の成長に活かすダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進です。かつて米国で仕事をしているとき、多様なアイデアの融合がいかに大きな力を生むかを肌で感じました。若手・中堅・シニア層、女性役職員、中途入社といった異質な個性の衝突と融合こそが、革新の源泉であると信じるからです。若手・中堅社員がリーダーシップを発揮し、経験豊富な中途入社のサポーターの意見も取り込みながら、抜本的な経営改革に挑む。これにより、自ら考え、決断し、実行できる「次世代の経営者」を育成していきます。
ステークホルダーの皆さまへのメッセージ「信頼」と「存在感」を胸に、
経営者として「結果」を出す
企業経営において株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまとの建設的な対話は、自社の立ち位置を客観的に把握し、進むべき方向性を見定める上で、極めて重要な機会です。皆さまとの対話においては信頼関係の構築が何よりも大切です。そのために「オープンかつ透明」であることを基本とし、誠実に対話していきます。情報の非対称性の解消に努め、予見可能性を高めるためにも、悪い情報ほど迅速かつ誠実に開示することが、信頼の礎となります。
加えて、資本政策は、市場との対話における重要事項と捉えています。成長投資、リスクバッファー、そして株主還元の拡充。この3つのバランスをどう取るかを解像度高く示していきたいと考えています。経営の最終使命は、中長期的な企業価値の最大化です。配当性向を高めていくことを検討する一方、将来の飛躍的成長につながる投資を断行すべき局面があると判断すれば、成長投資を選択することもあります。一方で、経済的ショックに耐え得る資本の備えもまた、重要です。この3つの最適なバランスを常に追求し、的確な判断を下していきます。そして、数多ある企業の中から、「東京センチュリーこそが最も魅力的だ」と選んでいただける会社になる。そのための努力を決して怠りません。
何かを達成すれば満足する、というゴールは私にはありません。東京センチュリーとして、常により良い社会を創造し、その実現に不可欠な存在であり続けること。それが当社の永遠の目標です。そのために不可欠なのが、「信頼」と「存在感」という2つのキーワードです。
経営者として、信頼に値する人間を育て上げること。社会から尊敬される会社を創ること。そして、未来を担う子どもたちが憧れるような仕事を成し遂げること。この3つが、私の掲げる目標です。経営者の仕事とは、夢を語ることではなく、結果を出すことです。故に、これらは私の「目標」であり、達成すべき「責務」であると認識しています。
今回、社長就任にあたり、一人のビジネスパーソンとして、与えられた職責に真摯に向き合い、そのことに喜びと感謝を感じながら、企業価値向上のために全力を尽くす所存です。東京センチュリーは、無限の可能性と潜在力に満ちあふれています。そして、素晴らしい役職員、パートナー企業、お客さまという、何物にも代えがたい財産に恵まれています。この恵まれた環境を最大限に活かし、皆さまからの負託に、結果で応えていくことをお約束します。
2025年10月