INTEGRATED REPORT 2023 CHAPTER 2
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INTEGRATED REPORT 2023

COVER STORY OPEN
  • TC TRANSFORMATION AND SUSTAINABLE GROWTH

  • 経営理念

  • 東京センチュリーの歴史

  • 東京センチュリーの目指すポートフォリオ

  • 攻め ビジネスモデルの変革・進化

  • 守り リスクマネジメントの高度化

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CHAPTER 1 CEOメッセージ OPEN
CHAPTER 2 サステナビリティ経営 OPEN
CHAPTER 3 中期経営計画2027と中長期で目指す姿 OPEN
CHAPTER 4 ステークホルダーとのエンゲージメント OPEN
CHAPTER 5 ビジネスモデルと各事業分野の成長戦略 OPEN
CHAPTER 6 リスクマネジメントの高度化 OPEN
CHAPTER 7 ESG戦略 OPEN
CHAPTER 8 Data Section OPEN

経営企画部門長メッセージ

SUSTAINABILITY
MANAGEMENT

財務・非財務戦略の統合思考に基づくサステナビリティ経営を推進し、持続的成長に向けた好循環を実現します

東京センチュリーがサステナビリティ経営に注力する意義

平崎 達也
取締役 常務執行役員 経営企画部門長 兼 経理部門長

日々の生活において、世界中で地球の未来を脅かすような自然災害や食糧・エネルギー危機、地政学リスクの高まりなどさまざまな問題が発生していることを実感しています。一人ひとりが地球の未来について真剣に考えはじめる時代となり、企業は経済社会の発展のみならず、地球を守る責任も負っていかなければならない存在となっています。

当社の祖業であるリース事業はモノを大量に生産・消費するのではなく、資源をリユース・リサイクルして使い続けるという視点に立った循環型ビジネスです。当社の経営理念はこうした背景が由来となっていますが、事業領域を広げた今もこの理念は一貫しており、循環型経済社会の実現に貢献するビジネスを不断に創出し、将来世代へより良い地球環境を残すことが使命と考えています。環境に配慮した循環型ビジネスと親和性の高い当社の事業活動を推進することが、社会課題の解決に貢献し、ひいては当社の持続的成長と企業価値向上を図るサステナビリティ経営につながっていきます。

そのために稼ぐ力を強化して着実に利益を獲得する、そしてその利益を将来の稼ぐ力となるESGに投資する、このサイクルを好循環に回していくことがサステナビリティ経営に必要と考えています。5月に公表した「中期経営計画2027(以下、新中計)」においても「稼ぐ力の強化」「ESGの推進」という2つの軸を打ち出していますが、こうした考えが背景にあります。

稼ぐ力のない企業は、概して目の前の数値達成に精一杯となり、どうしても近視眼的な経営に陥ってしまいます。中長期視点で将来の稼ぐ力を一層高めていくためには、人的資本やカーボンニュートラル達成などの非財務分野への投資は欠かせない要素です。非財務分野への取り組みは地道ですが、継続することで当社のビジョンや戦略に共感する投資家も増えるでしょうし、従業員の当社に対する誇りも生まれてくると思います。

5年後、10年後に振り返った時、持続的成長に向けた好循環が生まれていることをお客さま、株主・投資家、従業員などステークホルダーの皆さまが実感できる企業にしたいと考えています。

5つのマテリアリティの設定と東京センチュリー独自の価値創出

当社の5つのマテリアリティは、当社のモノ価値に着目した事業特性、自由度の高い経営環境を活かした多様な事業展開、そしてパートナーシップ戦略などの当社にとっての重要度とSDGsを踏まえたステークホルダーにとっての重要度を加味し、決定しました。このマテリアリティは、当社の役職員が日々事業活動を行う上で一つのメルクマールとなりますし、追いかけ続けることで当社の利益成長が実現し、同時に社会課題の解決にもつながっていくものです。

マテリアリティに沿った経営を進めていく上で重要なことは、社会課題の解決に貢献することと、当社のビジネスモデルや専門性をいかにして進化させるのかということです。金融機能に留まらない付加価値を重視したサービス・事業、従業員一人ひとりの専門性、豊富な事業パートナーという優位性を活かすことができれば、競争が激しいマーケットでも当社の独自性を発揮できると考えています。

サステナビリティ委員長として見るサステナビリティガバナンスの実効性

私は経営企画とサステナビリティの責任者を務めており、財務・非財務両方の経営戦略の立案・実行を担っています。両戦略を一人の責任者が担うことによって統合思考が深まるので、メリットが多いと思っています。2018年度にはサステナビリティ委員会を設置し、私は2022年度から委員長を務めていますが、サステナビリティにかかわるテーマはまさに経営の骨格ですので審議事項は多岐にわたり、毎回活発な議論がなされています。もちろん議論して終わりではなく、説明責任と透明性の観点から、経営会議と取締役会にて審議・報告し、さまざまな意見を得ながら将来に向けた戦略を着実に実行しています。

2022年度のサステナビリティ委員会では、大きなテーマとして2040年度にカーボンニュートラルを実現する方針を決定しました。また、炭素税の議論は目下、世界で進行中ですが、当社としても早めに対策を打つためインターナルカーボンプライシングを試行的に導入することを決定しています。さらには環境問題にかかわるリスクと機会の把握・対応策を検討するため、TCFDに沿ったシナリオ分析とその開示を実施しています。シナリオ分析に関しては、2021年度に太陽光発電事業、2022年度に航空機事業と続き、2023年度にはオートモビリティ事業へと対象範囲を拡大しており、今後も継続的に一つひとつ対応を進めていく計画です。こうした環境面の取り組みに加えて、従業員エンゲージメントの向上など、サステナビリティ経営推進に向けた中長期的な取り組みについて幅広く進捗のモニタリングを行っています。

2022年度は前中期経営計画の最終年度でしたが、3年間を振り返ると、議論してきた内容が着実に実行に移っていると実感していますし、サステナビリティ経営の意識が役職員一人ひとりに相当浸透してきたと感じています。ビジネスのフロントに立っている営業部門もサステナビリティの実現を意識し、マテリアリティに沿った事業活動の推進を積極的に行っており、それがビジネスの獲得につながりはじめていると思います。

今後の課題は、グループ全体に、財務・非財務戦略の両軸のつながりをより意識・浸透させていくための仕組みづくりだと思います。世間ではさまざまな非財務KPIが例として挙がっていますが、当社のビジネスや財務戦略との関連性をより深く考えて取り入れる必要がありますし、KPIの設定のみならず、達成に向けたPDCAサイクルをしっかり回していく体制の構築も重要です。課題の解決に向けては、まだ不十分な面があると感じていますので、まずは役職員がより意識しやすいよう、財務・非財務それぞれのKPIを目指すことがどのように好循環につながるのか、わかりやすい仕組みづくりを検討していきたいと考えています。

中期経営計画2027のテーマ

当社は2009年の合併以来、右肩上がりで成長し、リース業界の中でも市場から長年にわたり高い評価をいただいてきました。しかしながら、パンデミックやロシアによるウクライナ侵攻、カーボンニュートラルの急速な進展など、計画策定時には想定していなかったことが起き、この3年間の事業環境は非常に厳しく、当社の過去の取り組みを見つめ直す良い機会となりました。2023年度からスタートした新中計ではこれまでの課題認識を踏まえて「自らを変革し、変化を創造する」をテーマとしています。根底にあるものは、当社自身が変わっていかなければ持続的な成長はできないという意識です。TC Transformation(TCX)という方針を掲げ、ポートフォリオ、人材・組織、グリーン、デジタルの4つの変革を通じて持続的な成長を図っていく計画です。

バランスシート(2028年3月末時点のイメージ)の総資産は約7兆円です。2022年度のROEは8.4%、ROAは1.1%です。2027年度の目標ROEは10%、目標ROAは1.4%です。

バランスシート・マネジメントの方向性

TCXの遂行に加え、冒頭にも説明したように「稼ぐ力の強化」と「ESGの推進」という両軸を進めることで企業価値向上を図っていきたいと考えています。「稼ぐ力の強化」として「利益成長とROAの向上に徹底的にこだわる」ことを掲げていますが、高い収益性と安定性のあるポートフォリオに変革していく想いを投資家の皆さまに発信し、当社の成長に対するマーケットの信頼・期待を取り戻していくという強い意思を示しています。

ポートフォリオ変革の具体的な施策として、既存事業のバリューアップ、事業投資の資産回転、低効率資産の入れ替え・EXIT、新たな事業領域創出の4点を掲げており、加えてこれを支える「ESGの推進」の基盤強化も重要な施策となります。カーボンニュートラルや循環型経済社会への貢献、人的資本への投資の拡充、そしてマテリアリティに沿った社会的意義の高い新たなビジネス創出がポイントになると思っています。サステナビリティ経営の強化を通じて将来の稼ぐ力につながる社会・環境価値を創出し、企業価値を高めるという好循環を確立したいと考えています。

財務戦略のテーマは、「成長分野への投資」「業績変動リスクの低減」「資産・資本効率の向上」

前中期経営計画期間中の利益水準は目標値を大きく下回ったため、この結果により、当社の成長性・安定性という両面で市場からの信頼を損ねてしまった可能性があると認識しています。そうした問題意識から、今回の新中計における財務戦略として、高い収益性と安定性を目指したポートフォリオの転換を目指すことを決意しました。

実現に向けては、マーケットの拡大が見込まれ、当社の強みを活かせる成長事業への大胆な投資を進めるとともに、業績変動リスクを低減するためのリスクマネジメントの強化、さらには資産・資本効率の向上に向け低効率資産の入れ替えによる経営資源の配分見直しや事業投資の資産回転を役職員が意識していく必要があります。この3点について具体的にご説明します。

まず成長事業への投資ですが、有力企業とのパートナーシップ戦略を根底に、当社の強みである「金融×サービス×事業」のビジネスモデルを展開し、お客さまへの提供価値を高めることに注力します。特にパートナー企業との協働をベースに、期待リターンの高いサービスや事業投資を行っていきたいと考えています。注力領域は、当社の経営理念やマテリアリティに沿ったテーマである脱炭素、社会インフラ、サーキュラーエコノミー分野と捉え、全社一丸となって取り組んでいきます。

業績変動リスクの低減についてはリスクマネジメントの強化が必要だと考えています。前中期経営計画の3年間では多額の損失処理を余儀なくされましたが、その大半が航空機事業や投資事業など相対的に高いリスクキャピタルが求められるカテゴリーでの損失でした。この反省として、リスク量の高い特定カテゴリーについて、集中を避けるためリスクリミットの設定を検討したいと考えています。投資事業が増えてきたこともあり、従前から投資マネジメント委員会を設置して案件検討時の審査やモニタリング機能を強化してきましたが、投資に対するより適切な評価と、EXITコントロールのさらなる高度化が必要であると感じています。また、航空機事業の損失はロシアによるウクライナ侵攻を機に保有する航空機を取り戻せなくなったことが最大の要因です。結果として地政学リスクへの対応が十分ではなかったという反省から、カントリーリスクの再定義や海外エクスポージャーの管理方法の見直しに着手し、グローバルベースでのリスク管理態勢を強化していきたいと考えています。

資産・資本効率の向上については、低効率資産のEXITを機動的に行うビジネスモデルへの変革も進めていきます。ROAは当社にとって重要な経営指標でありますが、株主資本コストを考慮した収益性という意味では完璧な指標ではないと思っています。高リスクの事業に対しては高い株主資本コストが要求されるという意識をより強く持ってもらうためにROICスプレッド管理を精緻化し、リスクリターンの向上も含め、低収益・低効率資産を投資効率の高い優良資産に入れ替えていくことによって、当社全体の資本効率の向上を図っていきます。そのためには、株主資本コストに対する役職員の理解も深めていく必要があります。事業特性によってリスクが異なり、それに伴う株主資本コストも違ってきますので、事業分野別のROICスプレッド管理をより高度化していきたいと考えています。

リスクマネジメントの徹底や収益管理は重要ですが、当然ながら成長を求めていく中で、持続的成長につながる事業機会を読み、M&Aなどのインオーガニックを決断することも、我々取締役には求められていると思っています。来るべきチャンスに備え、投資マネジメント委員会の体制強化やリスク評価体系など、適切な判断ができる企業経営を推進していくことが肝要です。

非財務目標として「GHG削減に向けた取組み目標」「エンゲージメント指数」を設定した意図

新中計において、新たに非財務目標として「GHG削減に向けた取組み目標」「エンゲージメント指数」を導入しました。理由は稼ぐ力を高めるために「ESGの推進」が欠かせないという側面もありますが、やはりステークホルダーの皆さまに対してコミットメントとしてお示しすることで目線を合わせ、当社の目指す方向性をよりクリアにしていきたいという思いも背景にあります。

「GHG削減に向けた取組み目標」については、当社は既に2040年度のカーボンニュートラル達成を宣言していますので、今回の目標値は2027年度における中間目標という位置付けとなります。

当社グループのScope1・2を対象としたGHG排出量の約98%は出資先であるバイオマス混焼発電所から排出されていますので、この発電所をカーボンニュートラル化することとも言い換えることができると思います。これについては強い意識と覚悟を持って、策定したトランジション・ロードマップに沿った取り組みを推進していきます。

2つ目の「エンゲージメント指数」を設定した背景は、当社にとって人材が成長に必要不可欠なリソースであるということです。当社が定期的に実施している、従業員意識調査の2022年度の結果は肯定的回答率が63%となっており、従業員の皆さんから一定の評価は得られていると認識していますが、定量的数値の向上を目的化することなく、評価結果を真摯に受け止め、従業員との対話を通じた組織風土改革や人材施策につなげていくことが必要です。会社の戦略を担うのは人材であり組織です。この変化の激しい時代に当社はそれを乗り越えて引き続き成長を果たしていくため、経営戦略や事業戦略に沿った多彩な能力を持つ人材を確保し、育てていかなければなりません。多様な人材が能力を発揮できる、そして当社で働くことに誇りや幸福感を持てるような環境を整えるため、さまざまな施策を導入していく考えです。

株主還元(配当)方針は、1.長期的かつ安定的な利益還元、2.2024年の3月以降は、利益成長により1株当たり配当金の増配を継続、3.配当性向は当面35%程度とする方針、の3点です。

株主還元(配当)方針

  • 長期的かつ安定的な利益還元
  • 利益成長により1株当たり配当金の増配を継続
  • 配当性向は当面35%程度とする方針

利益成長、株主資本コストを上回るROE実現に向けて

当社のROEは現在8%台と、一時期と比較して停滞しています。株主資本コストは現状10%と認識していますので、エクイティスプレッドがマイナスの状態になっていると考えられ、PBRが1倍を切るなどマーケットの評価も厳しい状況です。

改善に向けた取り組みとして、利益成長のための成長投資と資産効率の向上を実現し、ROA(総資産純利益率)を1.4%の水準に引き上げていきます。さらにリスク・リターンを追求するために、株主資本コストを加味したROICベースの考え方を各事業分野に浸透させ、ポートフォリオの配分も再考していきます。

適切な財務レバレッジの水準や資本政策もあわせて検討していきます。成長投資の拡充に伴い増加するリスクを資本でカバーできるよう、リスク量を資本利用率のガイドライン水準に収めるというマネジメントを推進しています。現状、今後のリスク量の水準を踏まえると、自己資本比率は14%程度まで上昇する必要があるものと考えています。

次に株主還元ですが、ROE10%の目標値と、今後5年間で約1兆円のセグメント資産の積み上げを図るうえで適切な資本量のバランスに配慮すると、配当性向は当面の間、35%程度の水準になると考えています。純利益は中計期間において着実な成長を描いておりますので、想定通りに進捗すれば配当金の実額も増配傾向になると見ています。

また、丁寧な情報開示のもと当社の成長戦略を投資家の皆さまに理解してもらうことと株主資本コストの低減につなげていくIR活動も重要です。これまで業績のボラティリティが高く、予見可能性が低いことが投資家の皆さまに不安を与えておりましたが、積極的な情報開示とわかりやすい成長スト―リーに基づく効果的なIRを展開することにより、市場の信頼を獲得し、株主資本コストの低減を進め、PBR1倍以上の達成を目指していきます。

利益成長と株主資本コストを上回るROE実現の両立へ向けて、財務戦略とサステナビリティ経営を統合的に推進し、東京センチュリーならではのユニークさを最大限活かし、掲げたコミットメント達成に向けた具体的なアクションを着実に実行へ移すことを経営企画部門長として先導します。引き続き、市場との情報の非対称性の縮小に向け、積極的な情報開示を行うとともに、エンゲージメントを強化します。ステークホルダーの皆さまにおかれましては、今後とも変わらぬご支援をよろしくお願いします。

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