INTEGRATED REPORT 2023 CHAPTER 1
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INTEGRATED REPORT 2023

COVER STORY OPEN
  • TC TRANSFORMATION AND SUSTAINABLE GROWTH

  • 経営理念

  • 東京センチュリーの歴史

  • 東京センチュリーの目指すポートフォリオ

  • 攻め ビジネスモデルの変革・進化

  • 守り リスクマネジメントの高度化

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CHAPTER 1 CEOメッセージ OPEN
CHAPTER 2 サステナビリティ経営 OPEN
CHAPTER 3 中期経営計画2027と中長期で目指す姿 OPEN
CHAPTER 4 ステークホルダーとのエンゲージメント OPEN
CHAPTER 5 ビジネスモデルと各事業分野の成長戦略 OPEN
CHAPTER 6 リスクマネジメントの高度化 OPEN
CHAPTER 7 ESG戦略 OPEN
CHAPTER 8 Data Section OPEN

CEO MESSAGE

代表取締役社長
馬場 高一

TC Transformation(TCX)を進め独自の「金融・サービス企業」へ

4つのトランスフォーメーションを推進し、「アセットバリュー・イノベーション&インテグレーション」の深化とともにサステナブルな成長を図ることで企業価値の向上につなげていく

成長軌道への回帰に向けて新たな「中期経営計画2027」をスタート

過去最高益となる経営目標を達成するという意気込みで前回の中期経営計画(以下、前中計)を2020年2月に公表しましたが、新型コロナウイルス感染症のまん延やロシアによるウクライナ侵攻など当初想定していなかった厳しい事業環境に直面し、最終年度の2022年度の業績は、ロシアの航空会社向け航空機の減損損失を主因に、当期純利益はわずか48億円にとどまるなど、結果的に前中計の経営目標は大幅な未達に終わりました。最終年度の2022年度をグレート・リセットの1年と位置づけ、次の成長に向けたリスタートの体制整備ができたことを前向きにとらえ、収益力のさらなる向上とレジリエントかつ持続性の確保に向けたリスクマネジメントの強化に一段と注力し、もう一度成長軌道に乗せていきたいという強い気持ちです。

その一方で、前中計では足許の事業基盤の強化や採算性向上につながる多くの成果もありました。例えばレンタカー事業は、人の移動に影響を受けるビジネスのため、コロナ禍において苦しい事業展開を強いられましたが、店舗網の見直しやスマホアプリ経由による販売強化など大胆なオペレーション改善に取り組み、前中計の最終年度には過去最高益を更新するV字回復を遂げました。当社の強みであるパートナーシップ戦略も、NTT・TCリースの伸長やNTTグループ各社との連携ビジネスの拡大、三菱地所・伊藤忠商事・NXグループ・JFEエンジニアリングなどの有力パートナー企業との協業深化をはじめ、将来の成長を裏付ける楽しみな事業を創出できた点は大きな成果です。コロナ禍で逆風の環境にあった航空機事業についても、回復してきた旅客需要を背景とするエアラインからのリース需要や中古機体のエンジン・パーツ需要を取り込み、今後は中核事業に相応しい成長軌道を歩んでいくものと見ています。さらには、大企業からのカーブアウト案件などに投資を行うプリンシパル・インベストメント事業や太陽光発電におけるアセットマネジメント・テクニカルマネジメント事業など着実に成長しており、当社にとっては新しい事業領域ですが、今後の金融・サービス機能のさらなる向上につながることを期待しています。このようにレンタカー事業の躍進をはじめ各事業が進展した背景としては、お客さまに必要とされる付加価値を提供し続けたいという強い意志が、多くの成果に結び付いたものと考えており、当社のポテンシャルの高さを改めて感じています。

今回策定した「中期経営計画2027(以下、新中計)」では、これまで築いてきたビジネスモデルやパートナーシップ戦略などの強みを深化させるとともに、ポートフォリオ・人材/組織運営などの変革に不断に取り組みます。これまでと同じ方法では、いずれ成長の限界が訪れると思っていますので、役職員一人ひとりが変化に対応するだけではなく、自らを変革し、積極的に変化の創造に向けて挑戦していく、そのような組織・風土の構築を先導することが私のミッションであると考えています。

5つの事業分野を持続的成長に導くTC Transformation(TCX)推進の4つの柱

10年後も持続的な成長を遂げるためには、一貫した強みであるアセットバリューに根ざしたビジネスモデルやパートナーシップ戦略などの「変わらないもの」をより強化していきます。一方、デジタル技術の進展や脱炭素への取り組みといった社会課題の解決に資するような「変化を意識すべきもの」については、スピード感を持って大胆に推進し、独自性と競争優位性の高い付加価値の創出に注力します。

2023年度からスタートした新中計においては「自らを変革し、変化を創造する」ことをテーマとしていますが、私は常日頃から「感じる力を大切にしよう」というメッセージを役職員に伝えています。単に目の前の事象に対応するだけでなく、短期・中期・長期の目線でシナリオプランを描き、先読みした上でどのような対応をしていく必要があるのかを自ら思考することが大切です。役職員一人ひとりがFirst Moverとなることを含めて半歩先、一歩先の変化を思考し、絶え間なく挑戦する、その繰り返しの先にこそ、ビジネスモデルの変革や新たな事業領域の創出につながっていくものと考えています。

新中計では、こうした自らを変革しようとする強い意志を「X(Transformation)」に込めて、4つの「X」を総称した「TCX=TC Transformation」を基本方針としています。「ポートフォリオTransformation(PX)」・「グリーンTransformation(GX)」・「デジタルTransformation(DX)」・「人材・組織Transformation(HRX)」という4つの「X」に果敢に取り組むことで、稼ぐ力の向上とESGの推進を図り、企業価値の強化につなげていきます。

「ポートフォリオTransformation (PX)」については、事業の成長性と効率性を判断軸とし、成長分野に資本を投下していくとともに、既存事業については一層のバリューアップを推進し、新たな事業領域を創出しながらポートフォリオを変革していきます。成長性・効率性ともに今後も改善が見込めない事業については、事業の入れ替えやEXITを機動的に行い、経営資源を有効に活用することにより、ROAの向上を実現します。

「グリーンTransformation(GX)」については、各事業分野における関連事業の深化と組織横断での連携を推進するために「GXタスクフォース」を設置しました。2023年度より環境インフラ事業分野を新設し、各事業分野に分散していた環境関連のノウハウを集約するとともに、最新の情報や顧客ニーズを役職員に共有・還元し、新しいビジネスを生み出す好循環を実現していきたいと考えています。当社では、早くから太陽光やバイオマス発電などの再生可能エネルギー事業を積極的に進めてきましたが、最近では、蓄電池事業やEVの普及を見据えた充電サービス・バッテリー評価・リユースを行う企業との連携なども進めています。今後は海外の再生可能エネルギー事業への参画にも挑戦していく考えであり、当社の新たな成長期待分野として、全社共通にて取り組んでいきます。

「デジタルTransformation(DX)」については、デジタル技術やデータの利活用が不可欠となるなか、これらを有効に活用した金融・サービスを不断に創出していきます。パートナー企業やお客さまが直面するさまざまな環境変化に対する事業基盤の整備のお役に立ち、新たな社会価値の創出に貢献することが、当社にとっての「DX」の中核であると考えています。事業分野の枠を超えて推進していくため、私が自ら統括する形で「DXタスクフォース」を立ち上げ、DX人材の育成プランの策定を含めて各種取り組みに着手し、顧客提供価値の向上、社内業務プロセスの生産性向上の実現を目指しています。

TCX(TC Transformation)推進の4つの柱とは、PX:高い収益性と安定性のある「ポ ー トフォリオ Transformation」、HRX:変化を創造できる「人材・組織 Transformation」、GX:カーボンニュートラル関連事業の創出をする「グリーンTransformation」、DX:デジタル技術の活用による「デジタルTransformation」です。将来の持続的な成長に向け、主に4要素の変革を図ります。

TCX推進の4つの柱

TCXの礎となる人材戦略・組織戦略

これらのPX・GX・DXといった「X(=Trans formation)」を推進し、10年20年と長期にわたる企業価値の持続的な向上に導く戦略を実現していくためには、「人材・組織Transformation(HRX)」を特に重視しています。

新中計の公表後、私は役職員に対し、トランスフォーメーションの担い手として一人ひとりが自己変革に弛みなくチャレンジしていく「X(エックス)人材(=Transformation人材)」を目指してほしいということを強調しています。企業が変わるためには、企業を構成する役職員も各々進化を遂げていく必要があります。一人ひとりが「X人材」になって変化を創造する担い手になってもらう、そのための組織づくりもトップが自ら主導します。複雑化する社会の中で、お客さまの課題解決に資する取り組みかどうかを思考し、自らの仮説を実践することができる、そのような「人材」を育成することに注力します。

新中計ではエンゲージメント指数の肯定的回答率の維持・向上をはじめ、人材確保・育成に向けた投資額をこれまでの2倍以上にすることを表明しています。豊富な研修テーマを提供することによる一人ひとりの専門性・スキル向上の実現に加えて、役職員一人ひとりが躍動する「全員活躍」の職場環境の整備は、お客さまへのソリューション・各種提供価値の増加に直結します。

これまでも従業員エンゲージメント向上策の一環として、社内公募制度の「キャリアチャレンジ制度」や新規事業提案制度である「TC BizChallenge制度」を立ち上げてきましたが、2022年度からは従業員同士が縦・横・斜めでコミュニケーションを活性化する交流の場として自由にフリーディスカッションを行う「TC-Mee+(ミータス)」もスタートしています。

私が参加する回では、「10年後の東京センチュリーをどのような会社にしていきたいか」をテーマに年次・役職などの縛りなく自由に討議を行っています。最後に、私を含めた参加者全員がカードにディスカッションを通じて感じたことを自由に書いています。私にとっては、従業員との貴重なコミュニケーションの場であり、ディスカッションや参加者のメッセージからも当社の未来に対するたくさんの熱意を感じることができ、現場実感は大きな収穫となっています。企業の成長には経営陣と従業員が相互に理解・信頼した上で、ベクトルを定めて共にお客さまのために努力することが重要ですが、相互理解の点では「TC-Mee+」がその一端を担っています。やはり、従業員の声は経営陣にとっての宝です。地道な取り組みですが、今後も継続していきます。

2023年は、当社の社内報において「Wellbeing 元年」にすると宣言しました。仕事へのやりがいを感じることはもとより、従業員・その家族も含め理想的な健康状態が維持されているのか、良好な人間関係が構築できているのか、このような観点に配慮した施策を推進する「Well-being」の視点を経営に取り入れていきます。従業員一人ひとりの幸せやエンゲージメントの向上が「全員活躍」の土壌となり、当社の持続的成長や経営計画の達成に資するものと考えています。

TC-Mee+(ミータス)参加者が感想を記した色紙

「金融×サービス×事業」の根源となる「アセットバリュー・イノベーション&インテグレーション」

外部環境が急速に変化する昨今の状況に鑑み、従来の単なるアセット・プロバイダー/サービス・プロバイダーといった当社単独の機能のみでは、お客さまから評価されるに十分な付加価値を提供していくことが難しくなりつつあると感じています。

パートナー企業との協業など「金融×サービス×事業」を当社独自のビジネスモデルと位置づけ、付加価値の高い金融・サービスの創出にこれまで注力してきましたが、さらに磨きをかけていく過程においては、GX・DXなど各種イノベーションの発想を結集して、さらにモノ価値を高めるようなソリューション・ファンクションのアップグレードを目指した取り組みが必要となります。さまざまなパートナー企業ともお互いに知恵を出し合う「オープン&イノベーション」のスタンスで創出したシナジーをビジネスモデルにインテグレートすることにより、当社単独ではなし得なかったモノの利用価値を一層高めることにつながるものと考えています。

これらの取り組みを拡げていくことにより、「金融×サービス×事業」の根源ともいえる「アセットバリュー・イノベーション&インテグレーション」を今後とも進化させ続けていきます。当社が提供する金融・サービスがどれほどの利便性を付加できているのかを不断に追求するなど、ビジネスモデルのレベルアップに引き続き注力していくことにより、お客さまやパートナー企業に永続的に支援される存在となることを目指し、さまざま変化に打ち勝つ持続的な成長を実現させていきたいと考えています。

リスクプロファイルの多様化を踏まえた実効性の高いリスクマネジメントの確立

前中計では航空機をはじめ多額の減損損失を計上するなど、リスクプロファイルの多様化を踏まえた管理面における備えが十分ではなかったと考えています。このような反省点を、今後の成長に向けたリスクマネジメントの強化に必ず活かしていきます。

長期の成長戦略を描いていく上では、成長領域を中心に高い期待リターンが得られる分野への投資と適切なリスクコントロールの両面を追求していくことになります。しかしながら、今後の事業環境はこれまで以上に不確実性が高まっていくことを前提とし、時代やマーケットの変化を鋭敏に感じ取り、適正なリスクマネジメントが遂行できる管理態勢を強化していくことが重要です。経営資源の効率的配分を目指すリスクコントロールフレームワークと適切な投資判断を行うための投資マネジメントフレームワークの高度化を遂行し、経営のさらなる安定性実現に注力します。

収益性については、2009年の合併以降、経常利益のCAGR(年平均成長率)は10%以上であり、今後も各事業分野がさらなる利益成長を目指す上で、守りであるリスクを意識した対応も重要です。成長に向けた方法論は事業分野によって異なりますが、これまでの投資実績に基づく収益性や効率性などを事業分野ごとに精査し、事業ボラティリティを抑制したポートフォリオを構築します。

リスクマネジメントの実効性は、業績のボラティリティや資本コスト算出に直結する重要なファクターとなります。社内における取り組み強化に留まらず、今後とも投資家の皆さまにリスクマネジメントの進捗状況などを積極的に発信・開示していきたいと考えています。リスク管理の徹底による業績のボラティリティ抑制と、投資家の皆さまとの対話・開示情報の拡充という両輪で資本コストを低減させることにより、市場評価の向上につなげていきます。

循環型経済社会の実現に向けて力強く挑戦を続け、持続的かつ高い収益性・安定性あるポートフォリオへの変革を推進

新中計では、時代を先取りすることにより、外部環境変化を乗り越え、自らを変革し変化を創造していく企業グループを目指します。前中計では達成できなかった利益目標を1年でも早く前倒しにて達成するとともに、利益成長とROA向上に徹底的にこだわり、高い収益性・安定性あるポートフォリオへの変革を通じて、ROE10%・PBR1倍以上への早期回復を目指します。

今後も適切なリスク・リターンに基づく成長に向けた積極的な投資を行い、安定的な成長、持続的な1株当たり利益の増大を目指していきます。そのために重要となるものが、「金融×サービス×事業」の根源である「アセットバリュー・イノベーション&インテグレーション」の進化による圧倒的な競争優位性の確立と、TCXとして掲げた4つのトランスフォーメーションを事業分野横断の視点からプロアクティブに推進することです。

当社グループは今後とも、信頼されるサービス・事業パートナーとして、循環型経済社会の実現に貢献し、社会課題の解決に向けての挑戦を続けていきます。2027年度の新中計目標の達成に向けて役職員とともに果敢にチャレンジしていきますので、引き続きステークホルダーの皆さまには絶大なるご支援を何卒よろしくお願いします。

2023年9月

馬場高一

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