高い専門性で新規事業を拓くスペシャルティ事業分野 原 真帆子 常務執行役員 スペシャルティ営業推進部門長 高い専門性で新規事業を拓くスペシャルティ事業分野 原 真帆子 常務執行役員 スペシャルティ営業推進部門長

優良パートナー企業との協業により「金融×サービス×事業」の3軸融合によるビジネスモデルを具現化し、ここ10年のうちに事業とともに収益規模を何倍にも拡大して東京センチュリーの成長をリードしてきた、中核セグメントの1つであるスペシャルティ事業分野。再生可能エネルギーから航空機、不動産まで、手掛けているビジネスも実に多種多彩です。

第三次中期経営計画(2016〜2018年度)において、スペシャルティ事業分野ではどういったことに取り組み、どのような成果を上げてきたのでしょうか?

第三次中期経営計画では、従来から手掛けてきたリースやファイナンス、ファクタリングといった金融事業だけにとどまらず、優良なパートナー企業を発掘し、当社自らも事業の運営に関わってビジネスを展開する方向に大きく舵を切りました。例えば、船舶や太陽光発電設備をリースで供給するだけでなく、主体的に運航管理事業や発電事業への進出を図りました。また、航空機ビジネスではジェットエンジンのパーツなどを取り扱う米国企業に出資し、共同で事業に取り組んでいます。このように、従来のファイナンサーから事業運営者へとシフトしていったことが第三次中期経営計画における取り組みの特徴でした。
スペシャルティ事業分野で営業基盤の強化として推進したのは、航空機事業および不動産事業におけるバリューチェーンの構築です。具体的には、米国大手航空機リース会社のAviation Capital Group LLC(ACG)への出資・増資、航空機部品・サービス事業を手掛ける米国GA Telesis, LLC(GAT)への追加出資、総合不動産会社・神鋼不動産の連結子会社化、不動産アセットマネジメント会社・日土地アセットマネジメントの持分法適用関連会社化を実施しています。その結果、特に航空機ビジネスや不動産ビジネスにおける業績の伸びが顕著で、2018年度の全社経常利益863億円のうち約4割を占める349億円を計上するに至りました。

スペシャルティ事業分野を取り巻く足元の環境はどうなっているのでしょうか?

スペシャルティ事業分野では多岐に渡るビジネスを展開しており、当然ながらそれぞれのプロダクツによって環境は異なります。船舶については海運市況サイクルのボトムを抜けてようやく回復基調を示し始めた局面にありますが、航空機は依然として高い需要が見込まれており、概して他の事業も好調に推移しています。
ただし、ここに来て世界情勢は大きく変化しており、米中通商問題をはじめ、政治面に起因する経済的インパクトが懸念視されています。私たちが手掛けている事業にすぐさま影響を及ぼすとは限りませんが、情勢を注意深く観察しながら事業を進めていく必要があると考えています。
環境・エネルギー分野では、2019年には台風が日本国内に深刻な被害をもたらしたように、最近は大規模な自然災害が頻発しています。気候変動による自然災害は深刻な社会課題であり、太陽光だけにとどまらず再生可能エネルギー全般に対するニーズが引き続き高まっていくことは間違いないでしょう。
航空機市場については、特にここ数年の間に競争が激化しており、リース料の低下も顕著となっています。加えて、LCC(格安航空会社)の乱立に伴って業界内では優勝劣敗が進んでおり、今まで以上に競合関係などを注視すべき情勢となっています。このような事業環境の変化を見据えて機敏に対処していくためにも、スペシャルティ事業分野で働く社員一人ひとりが感度を高くしておくことが重要です。国内外を問わず各分野においてアンテナを張りながら情報交換を密にし、目の前で起きている事象に対してどう動くべきかを的確に判断していきたいと思います。

スペシャルティ事業分野における競合他社に対する強みとしては、どういったことが挙げられますか?

航空機や船舶は極めて専門性の高いモノ(動産)であり、それらに関して深く理解することが求められてきます。言い換えれば、当社が手掛けているスペシャルティ事業の強みは、高い専門性、情報ネットワーク、分析力を有する「人財」によって支えられていることです。しかも、フラットな組織で意思決定のスピードが速く、チャンスを逃さず前進できるのも強みです。決断が非常にスピーディーであることから、「日本の会社とは思えませんね」と言われることも珍しくありません。
また、「金融機能を持つ事業会社」として単にファイナンスを担うだけにとどまらず、さらに一歩進んでそのモノが関連する事業の運営者となり、セカンダリーマーケットを含めたビジネス全体を司ることによって、より高い収益性を追求できるのも強みだと言えるでしょう。
高い専門性を強みとするためにも、その分野に長けた優秀な「人財」を採用するとともに、パートナー企業と対等に渡り合えるように、人材の育成と日々スキルアップに努めたいと考えています。そして、専門性の高さや情報ネットワーク力をさらに強化していくつもりです。

第四次中期経営計画(2019〜2021年度)におけるスペシャルティ事業分野の方針やビジネス戦略についてお聞かせください。

スペシャルティ事業分野では、「専門性」と「発想力」で 事業のさらなる洗練を指向していくことを方針として掲げています。この「洗練」という言葉が何を意味するのかについて、簡単にご説明しましょう。先に述べたように、第三次中期経営計画を進めていく課程において、スペシャルティ事業分野では様々なパートナー企業との連携関係を構築してきました。こうして良好な土台が整ってきたので、それぞれのビジネスの中身を磨き上げてレベルアップと事業拡大を進めるとともに、ビジネス間のシナジーを追求していくことを「洗練」という言葉で表現しています。
そして、第四次中期経営計画では「洗練」を推進する具体策として、①パートナーとの協業によるバリューチェーンの最大化、②環境変化に呼応した新規ビジネスの開拓、③グローバル・スタンダードの組織基盤・インフラ構築の3つを挙げています。

パートナーとの協業によるバリューチェーンの最大化を図るための施策として、具体的にはどういった取り組みが挙げられますか?

具体策の1つとして、航空機ビジネスでは2019年9月にACGの完全子会社化を決定しました。同社を主体として、グローバルにオペレーティング・リースを展開するためです。ACGは保有・管理機体だけで320機弱、発注・コミット済機体も含めるとおよそ500機もの取り扱い数を誇る世界有数の航空機リース会社です。これだけの規模でオペレーティング・リースを手掛けていることが機体の先行発注などの交渉を行ううえでの大きな強みとなり、より有利な機体価格で何年も先まで予約を行うことが可能です。
一方、ACGが新造機のオペレーティング・リースをビジネスの主体としているのに対し、当社が出資しているGATはリース期間を終えた中古機体を解体し、ジェットエンジンなどのパーツを分解して転売するビジネスでも収益を上げています。これらのパートナーとの関係性を深めることで、当社の航空機ビジネスは機体やエンジンのリースからパーツのトレーディング、メンテナンスといった領域にまで裾野が拡大しているわけです。
アジアを中心として、グローバルな人々の往来はいっそう活発化しており、向こう20年間で世界における旅客機の数は現状の2倍に達するとの予測もあります。航空機のマーケットが今後も継続的に成長していくことはまず間違いなく、当社はパートナーとの協業に注力して新造機体と中古機体、中古パーツのビジネスをつなげることによって、バリューチェーンの最大化を図ります。そして、それぞれの航空機ビジネスにおけるシナジーを高めて、マーケット全体の成長を取り込んでいくことで、収益機会も次のステージへ上がっていくと考えています。

環境変化に呼応した新規ビジネスの開拓においては、実際にどのような施策を推進しているのでしょうか?

まず、今の日本社会において重要なテーマとなっている「地方創生」という観点から取り組んだANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパのプロジェクトが挙げられます。当社がインターコンチネンタルホテルズグループとともに開発を手掛けたホテルで、海外の富裕層を広く招き入れる最上級のリゾートとなっています。ラグビーのワールドカップでは大分県も開催地となって大いに盛り上がりましたが、それに先駆けて2019年8月に開業を果たしました。別府市や近隣の大学とも連携し、地域の活性化にも貢献していきたいと考えています。
また、プライベート・エクイティ・ファンドであるAdvantage Partnersグループ(APグループ)のAdvantage Partners(H.K.) Limited(APHK)と2019年10月に戦略的提携を結ぶとともに、同社の発行済普通株式(14.9%)を取得することを決めたのも、時代が求めているニーズに対応した新規ビジネスを立ち上げるためです。近年、高齢化に伴って国内の中小・中堅企業の間では、事業承継に関するニーズが高まっています。加えて、大企業の間では「選択と集中」の経営が進められ、カーブアウト(戦略的な外部への事業譲渡)が活発化しつつあります。
APHKとの協業は、これらの社会課題や企業戦略に応えるビジネスソリューションを新たに提供していくことを目的として、事業承継やカーブアウトをサポートしていく方針です。なお、AP グループは日本におけるPEファンドの草分けで国内有数の実績を誇っており、経営支援などによって投資先企業のバリューアップを図ることも得意としています。

グローバル・スタンダードの組織基盤・インフラ構築については、どういった施策によって果たしていくお考えですか?

2016年6月に当社は世界30カ国超で事業を展開する米国最大手の独立系リース会社・CSI Leasing, Inc.を完全子会社化しており、先に述べたようにACGについても同様の決定をいたしました。世界45カ国で90社以上もの航空会社に機体を供給し、真の意味でグローバル企業である同社を完全子会社化することで、世界を相手とするビジネスの組織基盤・インフラが整いつつあると言えます。グローバル・スタンダードの組織運営に関して、完全子会社とするACGから学ぶことも多く、すでに当社から社員を派遣していますが、さらにその数を増やして一体化を進めていく方針です。

スペシャルティ事業分野において推進している戦略は、2016〜2030年にグローバル社会が達成すべき目標として国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)に対して、どのような関連性があるのでしょうか?

SDGsは17の目標から構成されていますが、スペシャルティ事業分野で展開している環境・エネルギー事業のうち、太陽光発電事業は、その中の「エネルギー(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)」に貢献していると考えています。そして、日本政府はSDGs推進の一環としてあらゆる人々が活躍できる社会をめざし、働き方改革や地域の活性化などに取り組んでいます。ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパによるホテル事業や、APHKとの協業による事業承継などのサポートビジネスは、国のそういった意向を反映したものだと捉えられます。
世界的な需要の拡大とともに進化を続けている航空機ビジネスについては、やはり17の目標の1つである「イノベーション(産業と技術革新の基盤をつくろう)」に結びついていくと言えるでしょう。さらに、当社は前述したように神鋼不動産を連結子会社化しており、同社が手掛けるマンションや戸建て住宅の開発を通じて、「都市(住み続けられるまちづくりを)」というSDGsの目標の1つに貢献できると考えています。

メッセージをお願いいたします。

振り返れば、この10年間は当社自体が大転換を図った局面であり、その中でスペシャルティ事業分野も変容を遂げてきました。こうした変化に社員一人ひとりが高い感度で対応していったことが様々な新規ビジネスの創出に結びついていると実感しています。激動の時代を迎えているだけに、今後はさらにアンテナの感度を高めることが求められるでしょう。
専門性を高めていくうえでは、旺盛な知的好奇心で自らのビジネスに立ち向かい、常に愛情を込めて取り組んでいくことが大前提となってきます。その努力が結果的にビジネスの収益につながるのだと考えています。新しいことに踏み込むには勇気を必要としますが、調査に調査を重ねれば、やがては自分自身の中で何らかの確信が芽生えるはずで、それが感度というものです。現在のスペシャルティ事業分野が非常に面白い状況にあることを社員一人ひとりが肌で感じ、経験を積んでほしいと思っています。
ステークホルダーの皆さまにご理解いただきたいのは、けっして当社はやみくもに事業領域を広げているわけではなく、一つひとつ時間をかけて練り上げてきた取り組みであるということです。当社にとって真の礎となりうる事業で、一過性ではなく持続的に安定した成長が見込まれるものに照準を定めています。こうして深くビジネスの本質を捉えながら新たな事業を一つひとつ積み上げていき、バリューチェーンの拡大を図るとともに、各事業間におけるさらなるシナジーの創出、極大化を進めてまいります。その展開を楽しみにしていただきつつ、今後も末永くご支援いただけますと幸いです。

原 真帆子

常務執行役員 スペシャルティ営業推進部門長

第一勧業銀行、Citibank, N.A.、新生銀行を経て2011年に入社。同10月にファイナンス営業開発室長。2013年に執行役員、2016年に常務執行役員に就任。社内外の女性の活躍地位向上にも取り組んでおり、2019年4月には、航空業界の非営利団体であるAdvancing Woman in Aviation Roundtable(AWAR)で日本における第一回「Trailblazer(先駆者)賞」を受賞。

(記事の内容、肩書などは掲載当時のものです)