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  ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ ホテル事業を通じた地方創生

国内初となるインターコンチネンタルのリゾートホテルが別府に誕生

2019年8月、大分県の別府市において、当社が誘致に携わったANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパがオープンしました。その開業式で、ある方が私にこのような感想を述べられました。
「こうしたスーパーラグジュアリーで国内初となる高級リゾートホテルを、4年も前のタイミングでよく御社は誘致の決断を下されたものですね」
今でこそ、インバウンド(訪日観光客)のラッシュが一過性のブームではなかったことを実感できますが、当社が本件を決議した当時はそこまでの確信を抱くのは難しかったのが実情で、確かに社内でも大きく意見が分かれました。しかし、私は以下に申し上げる三つの動機から、ぜひとも本件を遂行すべきだと考えていました。
当社は2009年4月の合併以来、約10年間にわたって「金融」から「サービス・事業」へと事業構造を転換させることに取り組んできており、本件はその方向性の中心に位置しているというのが第一の動機です。そして、第二の動機としては、観光立国と地方創生は政府の成長戦略における重要テーマであり、当社もその一役を担いたいと考えていたことが挙げられます。
私自身が大分県の出身で、別府市や「おんせん県おおいた」の魅力は十分に承知し、インバウンドにも必ずや訴求できると思っていました。さらに、「観光は短期の移民であり、外貨を稼ぐという意味では輸出産業と同義」であると捉えていたことが第三の動機です。

日本有数の温泉地である別府に2019年8月ラグジュアリーホテルがオープン

別府市街と別府湾を望むインフィニティプール

実は、自動車産業よりもGDPに大きく寄与するのが観光業

グローバルに見渡せば、観光業は自動車産業よりもGDP(国内総生産)への寄与度が大きいと言われています。振り返れば、戦後の日本は貿易立国を心掛けてモノを輸出することで外貨を稼ぎ、豊かさを求めてきました。
しかしながら、自国の輸出拡大ばかりを追求すると、相手国を窮乏させて軋轢が生じがちとなることは周知の通りです。こうしたことから、多くの先進国は相手国において現地生産を行い、雇用も創出するという方向にシフトしてきたわけですが、実は貿易以外にも外貨を獲得してGDPの拡大を図り、豊かな社会を築き上げる手段があります。
それが観光業であり、日本各地にはインバウンドを魅了する数々の観光資源が存在しています。したがって、観光業が地方創生の糸口となってくるのではないかと私は考えているわけです。
ただし、やみくもに観光業を推進しても、功を奏するとは限らないでしょう。現在、九州におけるインバウンドの平均旅行消費単価は一日1人当たり1万〜2万円とされています。観光業に詳しいことで知られるデービット・アトキンソン氏は著書を通じて、「欧米の富裕層の平均旅行消費単価は1人当たり300万〜400万円に達している」と指摘していますし、「日本が稼げる観光業を実現できていない一番の問題は高級ホテルが少ないことだ」とも述べています。
つまり、欧米の富裕層をターゲットとしたスーパーラグジュアリーな高級ホテルの存在が求められているということでしょう。こうしたことから、IHG(インターコンチネンタルホテルズグループ)を誘致し、別府市や大分県の発展に結びつけたいという発想に至った次第です。ちなみに、ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパのような5つ星格付のホテルは日本国内にまだ30施設程度しか存在していませんが、タイではその約4倍に達していると言われています。

インターコンチネンタルはIHGにおける最上級ホテルブランド

世界有数の規模と高いステータスを誇るIHGは、2019年6月末現在で、世界100ヶ国以上に約5,700のホテルを展開しています。日本では、ANAとのジョイントベンチャーとして、IHG・ANA・ホテルズグループジャパンがホテル運営を行っています。
最上級クラスのインターコンチネンタルブランドでは187のホテルを運営しており、日本にはそのうちの7つがあって、新たに別府の施設が仲間入りを果たしました。
IHGの特色としては、①自身のブランド(ブランドごとに仕様が異なる)を大事にする文化、②進出先の地域との共生、地域の同業者や観光業飲食業者との共生を大事にする文化、③コンシェルジュ(ホテルでの案内役)機能を重視する文化が築き上げられていることが挙げられます。特に③は欧米富裕層のニーズに対して最大限に応えようとする姿勢であり、IHGの誘致が別府市に大きな波及効果をもたらしうると私は考えました。

ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ開業余話

実は、今回のプロジェクトは、2014年後半に「別府八湯」の一つとして名高い鉄輪の高台にある明礬地区の一角に地熱発電の立ち上げようと考えているので、それを手伝ってほしいという、知人の相談から始まりました。
約2万5,000坪に及ぶ敷地で、別府湾と別府市を一望できる見事な景観を誇っており、温泉の自噴が何十本も立ち上るという別府独特の風景が眼前に広がっています。そこで、私は知人にホテル用地として活用することを提案し、富裕層向けの高級ホテルなら既存の宿泊施設とも競合しないと考え、IHG誘致へと結びついていきました。
IHGジャパンのハンス・ハイリガーズCEO(最高経営責任者)は初めて別府を訪れた際、その景観に目を奪われ、「ここに世界クラスの高級ホテルがないのはなぜなのだろう?」とおっしゃいました。IHGの進出が決まった後の2016年4月、熊本や大分が大地震に見舞われましたが、それでも別府にリゾートホテルをオープンするというIHGの決意が揺らぐことはありませんでした。

当ホテルから自動車で約5分の距離に位置するAPU(立命館アジア太平洋大学)には約6,000人の学生が在籍していますが、そのうちの約50%は留学生です。様々な語学能力を有した人材を地元で獲得できるチャンスがあるのはIHGにとって大きなメリットとなりますし、APUにとっても学生たちがグローバルな観光業を習得できる好機となることを期待しています。

世界的な一流ホテルを官民一体で盛り上げて地域と共生

別府には素晴らしい温泉がたくさんあり、食材に恵まれ、釣りやゴルフ、山歩きなどのアクティビティも充実しています。宇佐八幡宮や国東半島に1,300年前から栄えた仏教文化など、歴史遺産も豊富です。そして何より、先進国の中でも日本は極めて安全な国で、人々は親切で、交通機関も発達しています。こうした点からも、別府という観光地がもっとグローバルに注目され、地域経済も豊かになっていくのが当然かと思われます。
IHG誘致が地元の経済にもたらす波及効果については、まだ開業から日も浅く、これから本格的な検証を進めていくことになるでしょう。ただ、すでに私たちは肌感覚で大きな手応えを感じているのも確かです。
地元では「別府を変えたインターコンチネンタル効果」とも表現されるほど期待が高まっており、IHG進出の発表後には同業のホテル事業者の間でも新規進出や大改築を決断する動きが活発化しました。また、別府市の地価は26年ぶりの上昇を示し、同市としては固定資産税の増収も期待できるようになりました。おそらく、雇用は大きく拡大していくのではないかと私は思っています。
地元と官民が一体となって、訪れてほしい観光客(富裕層)の目線に合わせて継続的に街づくりを進めていけば、別府の観光業はさらに発展していくはずです。

官民の連携で重要なのは、両者間におけるコンセンサス

私は若い頃、ドイツとスイスに7年間程度にわたって滞在していました。ドイツの街並みは美しく、市街地と田園風景はどの地を訪れても明確に区分されており、建物の色調は周囲と調和が取れていました。しかし、それは自然発生的なものではなく、地域住民の総意に基づいて行政サイドが規制を設け、厳しく建物や屋根の色などを統一した結果によって成されたものです。
スイスについても、どこを訪れてもきれいな山々とともに、家々の窓際に飾られた生花が印象的でした。実は、その生花には行政サイドから補助金が支払われています。地域を挙げて街の美化を心掛けることで、富裕層の観光客を誘おうという意図なのです。
富裕層は短くても一週間、長ければ数週間にわたって同じ場所に滞在します。彼らに気に入られれば、その地域でホテル業を営む事業者に追い風となり、彼らが潤えば税収も増え、住民福祉も充実できるということを行政サイドは期待しているわけです。
今回のプロジェクトにおいて地域住民と官民の連携が円滑だったのは、関係者間でしっかりとコンセンサス(共通認識)が得られていたからだと私は考えています。特に重要なのは地域住民の意思で、行政の独断で遂行できるものではありません。先述したドイツやスイスなどの例にしても、住民の思いがあってこそ実現できることです。

別府が観光立国・地方創生をめざす日本のモデルケースに

別府における今回のプロジェクトは、観光立国・地方創生をめざす日本の新しいモデルケースになると私は考えています。先に述べたように、世界的なラグジュアリーホテルを官民が一体となって盛り上げることで地域の発展に結びつけていくという理想形ができあがりつつあると痛感するからです。
政府は2016年3月に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」において、「訪日外国人旅行者数を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人まで拡大させる」という目標を掲げています。訪日外国人による旅行消費額についても、「2020年に8兆円、2030年に15兆円まで拡大させる」ことをめざしています。しかしながら、旅行者数は達成できたとしても、消費額のほうは厳しいとの見解を示す識者が少なくありません。より消費額の大きい富裕層の訪日を誘うことが求められてきます。
別府において今回のプロジェクトが成功すれば、IHGと同じクラスの高級ホテルが日本各地に進出を進めていく可能性が考えられるでしょう。その結果、欧米を中心とした富裕層の訪日客が増加していくことに結びつくわけです。現に、IHGは日本の地方都市での新規開業に強い関心を示しています。

地方創生に向けた東京センチュリーの取り組み

東京センチュリーグループは、「事業活動を通じて環境に配慮した循環型経済社会の実現に貢献する」ということを経営理念に掲げています。また、それに沿った重要課題(マテリアリティ)を特定し、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」を踏まえたサステナビリティ経営を推進しています。
そして、サステナビリティ経営の柱の一つ「社会インフラ整備への貢献」として、東京センチュリーグループのニッポンレンタカーによるモビリティサービス(カーシェアリング)と、ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパを通じた地方創生に取り組んでいます。こうしたことからも、我々が社内において今回のプロジェクトをいかに重要な位置づけとしているのかをご理解いただけると思います。
また、低炭素社会への貢献として太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー事業にも取り組んでいます。環境問題やクリーンエネルギーに対する意識が高い富裕層訪日客に、日本でもその意識が十分高いことをアピールすることが大切と考えています。

東京センチュリーでは、今後もIHGとの協業によるホテル事業の拡大を前向きに検討したいと考えています。今後も日本の観光業の活性化と地方創生にいっそう貢献していくためにも、成功事例を築き上げていきたいと考えています。

浅田 俊一

浅田 俊一

代表取締役社長

大分県豊後高田市出身。大分上野丘高校、東京大学法学部を卒業後、1972年に第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入社。みずほ銀行常務取締役、みずほフィナンシャルグループ取締役副社長、東京リース社長を経て、2009年4月に東京センチュリーリース(現東京センチュリー)社長に就任。豊の国かぼす特命大使。

(記事の内容、肩書などは掲載当時のものです)

日経地方創生フォーラムの講演動画はこちらからご覧ください。

2019年9月6日開催 日経地方創生フォーラム
シンポジウム「TRAVEL TECHで実現する地方創生」
企業講演 東京センチュリーが目指す地方創生に向けた観光立国のイメージ
東京センチュリー 代表取締役社長 
浅田 俊一