資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

現状認識と今後の方針

当社は、2023年12月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する現状認識・取組方針等を作成し、株主資本コストを10%と認識していることを含め公開いたしました。

直近の2025年3月期2Qにおいて、市場環境の改善や当社取り組みによってROEは9.1%と2024年3月期の水準からは改善したものの、依然として株主資本コストの10%を下回り、エクイティスプレッドはマイナスとなるなど現在の株価水準はPBR1倍割れの状況にあります。
こうした状況を踏まえ、取締役との間で現状評価と改善に向けた対応について議論いたしました。

株価の改善が進まない要因としては、中期経営計画2027の主要施策である「PX(Portfolio Transformation)」に掲げた高い収益性と安定性のあるポートフォリオ構築に向けた投資が不足していることにより、将来への期待成長率が低下し、PER低下を招いていると認識しております。加えて、円安に伴う資本増加や日米金利動向等によりROEが伸び悩んでいることも要因として挙げられます。
株主資本コストについても、依然として10%が妥当な水準であるとの結論に至りました。

PER向上については、当社の強みであるモノ価値に着目した事業領域において、伊藤忠商事やNTTグループを代表とする有力パートナー企業との協業深化・拡大の推進を実現することで将来の成長期待の醸成に繋げていきます。また、資本コストの低減については、 リスクマネジメントおよびコーポレート・ガバナンスの強化に加えてIR活動を通じた情報の非対称性の解消などにも努めてまいります。

今後、当社の中長期的な収益の安定性や成長性に対して株式市場から十分な評価を得られる様、「中期経営計画2027」にて策定した各施策を着実に実行し、リスクリターンをベースに資本コストを浸透させ、ROAの向上により早期にROE10%以上を目指すとともに開示の充実や市場参加者の皆様との建設的な対話に努めることで株主資本コストを引き下げることが肝要と認識しております。

スペシャルティ・オートモビリティ・国際の拡大により高ROEを維持するとともに利益成長を実現したことにより、PBRは2013年3月期から毎年1倍以上で推移していました。2020年3月期から2023年3月期にかけてはCOⅥD-19やロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けて大きな損失が発生したことからROEが低下し、PBRも低い水準で推移しました。今後は、中期経営計画2027の基本方針であるTCX(TC Transformation)によるROE向上、資本コスト低減によりPBR1倍以上を目指します。

株価向上に向けた主な取り組み

項目 実績(中期経営計画2027)と今後の取組方針について
PXの推進
(低効率資産の入れ替え・EXIT)
(事業投資の資産回転)
(既存事業のバリューアップ)
(新たな事業領域の創出)
  1. (1)
    資産回転の推進
    航空機・船舶・不動産・プリンシパルインベストメント事業を中心に市況を捉えた資産売却益の実現など資産回転を推進。
  2. (2)
    ROAの向上に資する成長投資とEXIT
    1. オートモビリティ、国内リース事業分野の子会社2社における持株比率の見直しに伴う持分法関連会社化(2023年度セグメント資産残高:2,000億円減少)や政策保有株式の売却を推進。
    2. 成長期待分野であるデータセンター事業についてNTTグループが運営する米国シカゴのデータセンターへ投資(2024年3月:459百万ドル)。また、伊藤忠商事などと環境インフラ分野における欧米の再生可能エネルギーへ投資。

ROEの水準をあげていくためにROA向上が不可欠であり、そのための成長投資とEXITによるPXを推進。

リスクマネジメントの強化 資本・リスク・リターンの三位一体のコントロールを進め、財務健全性の維持、資本効率の向上、リスク・リターンの向上により利益の最大化を指向。
具体的には、資本利用率のガイドライン管理、資本コストを意識したリスク・リターンの経営管理、投資マネジメントフレームワークの定着と高度化、カントリーリスク・グローバルリスクへの対応の4つの取り組みを推進。
資本コストを意識したリスク・リターンの経営管理は、ポートフォリオの入れ替えや事業評価などにおいて、リスク特性を反映した事業分野別のWACCを導入するなど、資本コストの概念を取り入れたROICスプレッドの活用の高度化を推進。
人材および組織の強化
  1. (1)
    従業員エンゲージメントの向上
    従業員エンゲージメント調査の結果の分析と同時に実施した従業員の意見をもとに現状把握と課題整理を実施。今後、課題を踏まえた施策の検討・導入など取り組みを推進する一方で、継続的な調査とモニタリングを実施予定。
  2. (2)
    人材育成
    事業戦略(新規事業の創出、既存事業の変革など)に連動する形で従業員に求められる能力強化(事業構想力、DXデクステリティ)に向けた新たな人材育成プログラムを開始。
計算式、PBRは、ROE(※)割るROE期待成長率等を含む株主資本コスト。ROE10%超の達成と株主資本コストの低減に向けて、TCX(TC Transformation)および株主・投資家との建設的な対話による情報の非対称性の解消を推進し、PBR1倍以上を指向します。※ROEは、2025年3月期第2四半期決算の値を年換算したもの

現在のPBR0.8~0.9倍からPBR1倍以上を達成するためには、ROEを向上し、株主資本コストを低減する必要があります。PBR1倍以上へのTransformationとして、ROE向上の観点ではポートフォリオの強化、株主資本コスト低減の観点ではボラティリティ低減・成長期待の釀成を行います。具体的には既存事業のバリューアップ、低効率資産の入れ替え・EXIT、事業投資の資産回転、新たな事業領域創出、リスクマネジメントの強化、カーボンニュートラルに対応した社会課題解決、DXを活用した事業基盤整備、人材および組職の強化、IRの強化です。

株主・投資家とのエンゲージメント

当社は、株主・投資家の皆さまとの対話を積極的に実施し、さまざまなご意見・ご要望を経営陣および従業員へフィードバックするサイクルを軸としたIR活動を推進しています。こうしたIR活動において得られたご意見をもとに、情報開示の拡充や経営課題の改善を実現し、株主・投資家の皆さまとの信頼関係の構築、資本市場からの適切な評価の浸透を図り、中長期的な企業価値向上につなげていきます。

主なIR活動の状況

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活動 2023年度 2024年度上期 内容
決算説明会 4回 2回 四半期ごとに決算説明会を開催
(第1・3四半期はIR担当役員、第2・4四半期は社長による説明)
個別ミーティング 約260回 約150回 国内および海外のアナリスト・機関投資家との対話
スモールミーティング 4回 1回 社長およびIR担当役員によるスモールミーティングを実施
事業戦略説明会 1回 - 国内および海外の機関投資家向け事業戦略説明会
海外ロードショー 2回 1回 社長およびIR担当役員による海外機関投資家との面談

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活動 2023年度 2024年度上期 内容
会社説明会 1回 1回 会社概要や事業戦略、株主還元方針などに関する説明会

株主・投資家の皆さまとの対話において得られたご意見をもとに改善した具体例

  1. 1「決算IR資料」の開示について頂いたご意見(2024年実施)
    DATABOOKの開示
    定量分析が容易になるよう、決算数値等のExcelベースでの開示を行ってほしい。
    改善内容
    既に開示を行っている決算数値等について、和英併記のもとExcelベースで整理を行い、自社IRページにおいて開示を開始した。開示概要は以下の通り。
    決算資料(決算短信・決算IR資料等)で開示を行っている数値(BS、PL、その他指標)
    主要財務データ:過去11年度分
    詳細財務データ:過去5年度分+当期を含む3年度の四半期実績
  2. 2「決算IR資料」の開示について頂いたご意見(2024年実施)
    事業分野別純利益見通しについて
    事業分野別の純利益見通しについての情報量を増やしてほしい。
    改善内容
    2025年3月期第1四半期決算より四半期決算における事業分野別純利益計画の進捗状況に関する開示を新たに開始した。
  3. 3配当に関してのご意見(2024年実施)
    累進配当方針の明文化
    成長と合わせる形で減配することなく、配当を実施してほしい。
    改善内容
    「中期経営計画2027」の配当政策において、累進配当を基本としつつ、利益成長による増配を目指す旨を明文化した。
  4. 4役員報酬に関するご意見(2024年実施)
    役員報酬制度の改定
    株主利益と連動した報酬制度の改定を行ってほしい。
    改善内容
    役員報酬を中長期的な事業の発展やTCXへの貢献と連動する枠組みにすることに加え、株主の皆さまと同じ目線に立ち、役員の株主価値向上意識を一層喚起するために「当社株式成長率」を採用。2024年5月に役員報酬制度を改定するとともに、新たに業績連動型株式報酬制度「株式給付信託」を導入。
  1. 5「中期経営計画2027」公表前に頂いた中期経営計画の策定に関するご意見(2023年実施)
    セグメント毎の増益ストーリーについて
    「中期経営計画2027」の計画値の公表について、東京センチュリーは、単一の商品を販売している企業グループではないため、少なくとも全体計画の数値だけ示すのではなく、事業分野別に業績予想を開示し、それぞれのセグメント毎に増益のストーリーを示さないとマーケットは、中期経営計画を株価に織り込むことができない。
    改善内容
    投資家の皆さまから頂いたご意見を経営陣にフィードバックし、「対話」を通じて得られた期待に応える開示を改めて検討した結果、「中期経営計画2027」では、事業分野別の利益計画と増益ストーリーをお示しするとともに事業分野別にセグメント資産残高増加額を公表して開示の拡充を図った。
  2. 6収益性に関するご意見(2023年実施)
    ROA改善について
    ROA改善に向けては、各事業の内、全社のROAを下回る事業の収益性改善も重要になる。東京センチュリーの事業は、パートナーとの共同事業が多いため、簡単ではないと思うが推進してほしい。
    改善内容
    オリエントコーポレーションとの共同事業会社である、オリコオートリースとオリコビジネスリースについて、両社がお客さまのニーズに迅速にお応えするためには、機動的な事業展開や最適な体制づくりを通じた効率性・生産性の向上、加えて両社のオリコグループとの更なる連携強化がOAL、OBLの持続的な成長に必要であると判断し、持分法適用関連会社に変更。
    持分法適用関連会社化に伴い、ROAの改善を実現。
    • 2023年9月29日に持分法適用関連会社化
  3. 7「決算IR資料」の開示について頂いたご意見(2023年実施)
    ベース利益の把握
    東京センチュリーの事業利益には、キャピタルゲインや減損などの一過性の損益が内包されている。ベース利益を把握し、株価に反映するためには、少なくとも内訳を開示していただきたい。
    改善内容
    キャピタルゲインは、不動産や営業投資有価証券の売却益を開示し、キャピタルゲイン以外の一過性損益は、「減損・貸倒・営業投資有価証券評価損益等」として数値を公表した。

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