Sustainability

EV普及のカギは周辺ビジネスにあり!
東京センチュリーが取り組む
EV市場のバリューチェーン強化に迫る

2023年11月15日

世界中で「脱炭素化」の動きが加速する中、自動車業界も大きな転換期を迎えています。カーボンニュートラルの実現に向け、世界が「脱ガソリン車」に舵を切る中、日本でEV(電気自動車)を普及させるためには何が必要なのでしょうか? 車両価格や導入コストの高さ、充電設備の不足、車種の少なさなど、さまざまな課題が立ちはだかる状況下で、EVだけではなく、その周辺ビジネスにも大きな変化の波が訪れています。

東京センチュリーでは、日本におけるEV普及を後押しするべく、EVビジネスのバリューチェーンの強化に取り組んでいます。本記事では、EVの推進に加えて、その動力源として再生可能エネルギーの活用を目指すバリューチェーンについて、EV市場の課題や今後の展望などを交えて解説します。

軽EVの登場で盛り上がるEV市場

          

過去のコラムでは、日本と世界のEV(電気自動車)事情について見てきました。
同記事でも紹介したとおり、カーボンニュートラル達成に向けて、日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。グリーン成長戦略では、産業政策・エネルギー政策の両面から、成長が期待される14の重要分野を選定し、国として高い目標を掲げ、可能な限り具体的な見通しを示しています。

この14の重要分野の1つに「自動車・蓄電池」産業が指定され、政府は、2035年までに新車販売で電動車100%の実現を掲げるなど、ガソリン車からEVをはじめとする電動車(※1)への転換を進めています。しかしその一方で、2022年の乗用車販売台数におけるEVの比率は1.5%(※2)にとどまるなど、目標達成には遠く及んでいないのが実情です。

カーボンニュートラルの広がり(出典:経済産業省)

カーボンニュートラルの広がり(出典:経済産業省

各国の電動化目標(出典:経済産業省)を加工して作成

各国の電動化目標(出典:経済産業省)を加工して作成

ところが2022年、それまで伸び悩んでいたEV需要に転機が訪れます。6月に販売が開始された日産自動車の軽EV「サクラ」の躍進です。2023年3月までの販売台数は3万3,097台(※3)と、販売期間が短いながらも、2022年度の軽自動車販売台数14位にランクインしました。また同時期に、三菱自動車も「eKクロスEV」の販売を開始、まさに「軽EV元年」といえるでしょう。

日本でEVの普及が遅れている要因の1つとして、ガソリン車よりも高価であることが挙げられます。しかし、比較的安価な軽EVが登場したことで、ガソリン車からEVへの乗り換えの検討がしやすくなりました。「サクラ」「eKクロスEV」ともに、国からの補助金(※4)を活用した場合、実質的な購入金額は200万円程度から(2023年10月時点/消費税10%込/※5、6)となり、セカンドカーとして軽EVを検討する家庭も増えているといいます。

EVには、ガソリン車よりも航続距離が短いというデメリットがありますが、一般的に軽自動車ユーザーは、長距離利用よりも、日常の買い物などの近距離利用の需要が高いため、EVと軽自動車の相性は悪くないといえそうです。このように、ユーザーのニーズに合わせたEV車種が増えれば、EV普及を後押しすると考えられます。

(※1)電動車......電気自動車(EV)の他に「燃料電池自動車(FCV)」「プラグインハイブリッド自動車(PHV)」「ハイブリッド自動車(HV)」も含む。
(※2)一般社団法人日本自動車販売協会連合会:「2022年4月~2023年3月燃料別メーカー別台数(乗用車)
(※3)全国軽自動車協会連合会:「2022年4月~2023年3月 軽四輪車通称名別新車販売確報
(※4)経済産業省:「令和4年度補正予算・令和5年度当初予算 クリーンエネルギー自動車導入促進補助金
(※5)日産自動車株式会社HP:「日産サクラ」価格・グレード
(※6)三菱自動車HP:『アウトランダー』『eKクロス EV』の価格を改定

EV等への補助金の概要(出典:経済産業省)を加工して作成(※令和5年度も継続)

EV等への補助金の概要(出典:経済産業省)を加工して作成(※令和5年度も継続)

EV導入から売却までを循環させる、EVビジネスの「バリューチェーン」とは?
EV導入から売却までを循環させる、EVビジネスの「バリューチェーン」とは?

          

軽EVの登場によって市場の活性化が見込まれるように、EVビジネスに新たなインパクトが加わることで、自動車業界のバリューチェーンを構成している周辺ビジネスも大きく変化しています。なぜ、こうしたEV周辺ビジネスが必要なのでしょうか。

例えば、ガソリン車からEVに変わればガソリンスタンドに代わり、自宅や駐車場、商業施設などに充電設備が必要になります。また、給油は数分で完了するのに対し、EVの普通充電は数時間の充電が必要となることから、エネルギーマネジメントの重要性も高まります。
さらに、EV車両やバッテリーを再活用するには、使用済みバッテリーの劣化度や寿命を正しく評価し、それに応じたリユース・リサイクルする仕組みを構築することや、中古車市場の整備も必要でしょう。EVを普及させるためには、各フェーズにおけるさまざまな周辺ビジネスの拡充が求められているのです。
このような背景のもと、東京センチュリーでは、EV普及に欠かせない周辺ビジネスにおけるバリューチェーンの強化に取り組んでいます(図参照)。

EVビジネスのバリューチェーン

          

バリューチェーンとは、直訳すれば「価値連鎖」。原材料の調達から製造・販売に至るまで、企業の事業活動を分類し、フェーズごとに連鎖的に生み出されている付加価値を把握するフレームワークのことです。

東京センチュリーが掲げるEVビジネスのバリューチェーンは、EVの導入から、充放電インフラ、リース満了・売却まで、EV市場に関わる一連の事業を可視化し、各フェーズで価値を付加し、さらなる強化を目指すというもので、パートナー企業やステークホルダーとともに、EV普及の障壁となっている課題を解決し、EV需要の拡大を目指しています。
バリューチェーンの強化は、EV市場の拡大だけではなく、これまで存在しなかったEV関連事業を創出し、新たな価値を生み出すことにもつながります。ここでは、東京センチュリーが進める「①EVリース・レンタカーのラインナップ拡充(車種多様化)」、「②EV充放電インフラサービスの拡充」、「③EVリース満了時・売却時の出口戦略多様化」に焦点を当て、詳しく紹介していきます。

① EVリース・レンタルのラインナップ拡充(車種多様化)
~NTTのEV100プロジェクト、タクシー産業のEV化を推進~

① EVリース・レンタルのラインナップ拡充(車種多様化)~NTTのEV100プロジェクト、タクシー産業のEV化を推進~

           

EV市場の活性化において、EV車種の多様化は欠かせません。法人・個人向けオートリース・レンタカーで豊富なラインナップを誇る東京センチュリーグループでは、EVリース・レンタカーのラインナップ拡充に取り組んでいます。その一例として、NTTグループが2030年までにすべての一般車両をEVに転換するプロジェクト「EV100」をサポートしています。
また、EV導入を検討している産業への展開も強化。EVバスやEVタクシーといった一般車以外の車両のEV普及に向け、業界・自治体への働きかけなどを進めています。タクシーアプリ「GO」を運営するGO株式会社との資本業務提携(※7)もその一環で、現在、EVタクシーおよび車内端末のリースなどを支援しています。EVタクシーは、ガソリン車に比べて振動が少なく、長時間運転するドライバーからも好評を得ています。

(※7)Mobility Technologiesとの資本業務提携について

② EV充放電インフラサービスの拡充
~EV充電の「プラゴ」、東大発 充放電マネジメントシステム「Yanekara」との協業〜

② EV充放電インフラサービスの拡充 ~EV充電の「プラゴ」、東大発 充放電マネジメントシステム「Yanekara」との協業〜

           

EV充放電インフラサービスとは、EVを導入するために必要となる周辺設備や仕組みを指します。なかでも、特に大きな課題となっているのが充電設備の不足です。
ガソリン車が給油を必要とするのに対し、EVは充電が必要です。充電拠点は、「基礎充電」(自宅、近隣駐車場など)、「経路充電」(ガソリンスタンド、高速道路上など)、「目的地充電」(商業施設、レジャー施設、宿泊施設など)に分類されます。ガソリン車に比べて航続距離が短いといわれるEVは、各拠点に十分な充電設備がなければ、電力切れなどを懸念して日常的な使用をためらうユーザーは多いでしょう。

東京センチュリーは、EV充電器のハード・ソフトウェアおよびIoTの設計・開発から充電ステーションの運営、EVユーザー向けサービスの提供を行う株式会社プラゴ(以下、ブラゴ)と資本業務提携(※8)し、EV充電設備の拡充を進めています。同社の大きな特長は、「目的地充電」をターゲットにしていること。ショッピングセンターや家電量販店と提携することで、EVユーザーが出かけた先(目的地)で充電できることに加え、自宅の充電設備(基礎充電)を持たない場合でも生活に身近な拠点で日常の充電機会を確保することが可能となります。
将来的には各商業施設が提供するアプリサービスとの連携も視野に入れています。

また、東京大学発のスタートアップ企業である株式会社Yanekara(以下、Yanekara)との業務提携(※9)も注目したいポイントです。Yanekaraは、EVを充放電させるシステムや、EVを含む分散エネルギーリソースを群制御できるクラウドシステムを開発しており、これらのシステムを活用しEVの蓄電化を推進しています。たとえば、EVに蓄えた電力を需給調整市場で取引することができれば、その収益でEV導入コストをまかなうことができます。さらに、災害時の電力確保という観点からも、EVの蓄電化が担う役割は大きいでしょう。

そのほか、エネルギーマネジメントへのサポート、EVのメンテナンス網の拡充なども、取り組むべき課題として捉えています。

(※8)EV充電サービスを提供する株式会社プラゴとの資本業務提携について
(※9)株式会社Yanekaraと東京センチュリー株式会社、YaneCubeの販売における協業を開始

左:プラゴの充電機器の一例 右:充電による電気料金増加を抑制するEV充電コントローラー 「YaneCube(ヤネキューブ)」

左:プラゴの充電機器の一例
右:充電による電気料金増加を抑制するEV充電コントローラー 「YaneCube(ヤネキューブ)」

③ EVリース満了時・売却時の出口戦略の多様化
~「MIRAI-LABO」、「関西電力」らとともに挑む、EVバッテリーのリユース・蓄電池化〜

③ EVリース満了時・売却時の出口戦略の多様化 ~「MIRAI-LABO」、「関西電力」らとともに挑む、EVバッテリーのリユース・蓄電池化〜

          

EV普及の過程においては環境への対応という課題もあります。EVは、走行時のCO2排出量を抑制できる反面、バッテリーの製造時に多くのCO2を排出します。一般的に、バッテリー寿命は5年〜10年ほど(使用環境によって異なる)といわれていますが、そのたびに新しいバッテリーを使用すれば、当然CO2の排出量も増えてしまいます。
バッテリー製造による環境負荷そのものを減らしつつ、使用済みバッテリーを適切にリユースすることで、車両価格や導入コストの適正化とCO2排出量の削減へつなげていくことが、EV普及のカギとなるでしょう。

では、適切なバッテリーリユースを行うにはどうすれば良いのでしょうか?
東京センチュリーは、EV車載バッテリーの評価・リユースに力を入れています。使用済みバッテリーの評価・リユース技術を持つMIRAI-LABO株式会社に出資(※10)。迅速かつ正確な評価によって柔軟なリユース先を検討することや、劣化度合いに応じて複数回のリユースをすることで、バッテリーリユース市場の拡大に貢献しています。1台のEVバッテリーが12本の街路灯に生まれ変わった事例もあります。

1台のEVバッテリーから生まれ変わった12本の街路灯

1台のEVバッテリーから生まれ変わった12本の街路灯

また、関西電力株式会社との業務提携(※11、12)により、使用済みバッテリーを定置型蓄電池などとして活用することを想定し、バッテリーのリユースに取り組んでいます。今後、買い替え時期を迎えた中古EVのリユース市場を開拓することで、ガソリン車のように「新車」と「中古車」の選択が可能となり、EV市場が盛り上がっていくことも期待できます。

(※10) MIRAI-LABO株式会社との資本業務提携について
(※11)電動車の使用済み電池利活用に係る業務提携契約の締結
(※12)使用済みEV電池を用いた蓄電池システムの共同研究の開始およびバッテリー取り外し済みのEV車体を再活用可能なパートナーの募集

使用済み電池の利活用イメージ

使用済み電池の利活用イメージ

EV市場に新たな価値を生み出し、脱酸素に貢献

          

EV市場に新たな価値を生み出し、脱酸素に貢献

           

このように、課題解決に取り組む各パートナー企業との協業によるバリューチェーンの強化は、市場に新たな価値をもたらします。今後、EVが普及し、新しいビジネスチャンスが生み出されていけば、EVの価値も高まり、普及が促進されていくでしょう。

車両や充電設備の導入コスト、企業活動や個人の趣味嗜好にフィットした車種の少なさなど、企業におけるEV導入にもいまだ課題が山積しており、社会全体での課題の解消が求められています。しかし、さまざまな企業が自らの強みを持ち寄り、事業化していくことで、確実に前進していくことができるでしょう。東京センチュリーが掲げるバリューチェーンの考え方は、そうしたソリューションのハブとして機能する可能性を秘めています。お客さま、社会、地域にとってやさしい循環型経済社会の実現を見据えて、東京センチュリーはこれからも奮闘していきます。

※記事の内容、肩書きなどは掲載当時のものです。

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