地球温暖化につながる温室効果ガスの排出をゼロにする。そんな「脱炭素社会」へのビジョンを掲げ、世界中の国々がさまざまな取り組みを進めています。しかし、そもそもなぜ脱炭素社会を目指す必要があるのでしょうか。それは本当に可能なのでしょうか。本記事では、そんな疑問に答えるとともに、脱炭素社会に向けた世界の潮流と日本の現状をご紹介します。
気温上昇により起こる災害、干ばつ、生態系破壊。地球温暖化は全世界共通の大きな問題
なぜ今、世界が「脱炭素社会」を目指しているのか。その理由はとても明確です。それだけ温室効果ガスによる地球温暖化が、深刻な問題になっているからです。
産業革命による近代化以降、人類が温室効果ガスを排出し続けてきた結果、この100年で世界の平均気温は1.1度上昇したといわれています。このように地球の温度が上昇したことで、世界各地で異常気象が増加。近年、日本で多発している大雨や大型台風なども、地球温暖化が影響しているといわれています。
この状況がこのまま続けば、海面上昇によって国土が水没する国が現れ、高潮や洪水、台風や熱波などの災害が多発し、多くの人命が奪われる可能性があります。干ばつによる食料不足も深刻化し、それにともなう紛争の激化も予想されます。さらに、生態系が破壊されるなど、地球環境は取り返しがつかないことになってしまいます。
もはや地球温暖化問題は、人類の存亡にかかわる問題であり、国際社会が真っ先に協力して取り組むべき課題である。そのことは、先進国から発展途上国まで含めた、全世界の共通認識となっています。
そんな地球温暖化問題の解決を目指し、2015年の国連会議で「パリ協定」が採択されました。歴史上はじめて途上国を含むすべての国が参加した、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。このパリ協定では、「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする」との目標が定められました。
温室効果ガスの排出をさまざまな取り組みや技術を用いて"合計で"ゼロにする「カーボンニュートラル」
現在、パリ協定をもとに、世界各国が温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。日本は2030年度の温室効果ガスの排出量を、2013年度の水準から46%削減するとの目標を決めました。
さらに先進国の多くは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しています。日本でも2020年10月に、菅総理が国会の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル(実質排出ゼロ)」を宣言しました。
「温室効果ガスの排出をゼロにする」と聞いて、そんなことは絶対に無理だろうと思った人もいるかもしれせん。確かに、私たちが文明生活を続けている限り、排出量をゼロにすることは不可能です。ただ、日本をはじめ各国が宣言しているのは、あくまで「全体としてゼロ=ネットゼロ」にするということです。
温室効果ガスは排出するだけでなく、吸収したり、除去したりすることもできます。例えば植林をし、光合成によって木にCO2を吸収してもらう。また、大気中のCO2を回収して貯留する「ネガティブエミッション技術」というものもあります。このような取り組みや技術を使い、温室効果ガスの排出量から、吸収量と除去量を差し引いた合計でゼロにする。それが「ニュートラル(中立)」という言葉の意味なのです。
「カーボンニュートラル」に向けて盛り上がる世界の潮流。新たな成長戦略の機会にも
「カーボンニュートラル」は、今や世界の大きな潮流となっています。すでに120以上の国と地域が「2050年までのカーボンニュートラル実現」を表明しています。
もともと環境意識が高いヨーロッパでは、2050年に向けた長期戦略のもと、再生可能エネルギーの活用や電化政策、リサイクル材の利用を強力に推進しています。アメリカではトランプ元大統領がパリ協定の離脱を表明したものの、バイデン政権が復帰を決定。気候変動問題を外交政策と国家安全保障の重要な要素に位置づけ、さまざまな政策を推進しています。
温室効果ガス排出量世界1位の中国も、2060年までのカーボンニュートラル実現を表明。2030年までにGDPあたりのCO2排出量を2005年比60〜65%削減することを目標に掲げています。
このように各国が競うように「カーボンニュートラル」を宣言しているのは、「脱炭素社会の実現」を新たな成長戦略の機会と捉えているからです。カーボンニュートラルを実現するには、新たな技術革新が不可欠です。現在の社会や経済のかたちを大きく変える必要があります。
そういった意味では、新たな投資を促し、産業構造を転換し、生産性を向上させる絶好の機会でもあるのです。世界中の企業や金融機関が「脱炭素社会」の潮流に乗り、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の観点を重視して投資するESG投資が拡大しているのもそのためです。
火力発電の削減や、太陽光など再生可能エネルギー活用の拡大が、日本の大きな課題
脱炭素社会実現のためにやるべきことは明確です。まずは社会全体のエネルギー消費量を減らさなくてはなりません。そのためには、私たちのライフスタイルや社会のあり方を省エネ型に変え、エネルギー効率の高い製品をさらに普及させる必要があります。
電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の普及、家庭の給湯器やコンロの電化、水素燃料電池の導入なども有効です。さらに重要なのが、大量の温室効果ガスを排出している電力部門の脱炭素化です。太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーの活用を増やす必要があります。
では、そのような脱炭素社会に向けた取り組みは、日本ではどれくらい進んでいるのでしょう。日本人のライフスタイルはもともと環境との調和を大切にしたものです。日本には高度な省エネ技術があり、燃料電池など水素社会に向けた研究開発も進んでいます。ただ大きなネックとなっているのが、天然資源が少ないことです。
今後、石炭火力発電を段階的に削減するとともに、太陽光などの再生可能エネルギーの活用をいかに拡大するかが日本の大きな課題です。
太陽光発電事業で「脱炭素社会」の実現に貢献する東京センチュリー
脱炭素社会を実現するには、国や行政だけでなく、企業の役割も重要です。多くの日本企業も独自に温室効果ガスの削減目標を掲げ、事業を通じた脱炭素社会への貢献に力を入れています。
東京センチュリーが、京セラとともに取り組んでいる太陽光発電パネル事業もその一つです。京セラ製の高品質で耐久性の高いパネルを普及させることは、長期的に温室効果ガスを削減するうえで非常に有益です。
また、事業者が太陽光発電を導入するうえでネックとなっているのが、初期費用の負担です。そこで東京センチュリーは京セラグループと共同で、太陽光発電設備の導入に必要な維持管理の手間やコストを負担し、初期投資ゼロで太陽光発電システムを導入できるサービスを提供しています。このサービスを活用し、2020年には川崎重工業・西神工場の屋根に、太陽光発電設備が設置されました。
さらに、神鋼不動産との協業で、新たな再生可能エネルギー事業も開始。神鋼不動産の保有不動産、今後開発予定の土地・建物に太陽光パネルを敷設し、そこで発電した電気を自家消費するとともに、余剰分を他施設へ送電する試みです。
循環型経済社会の実現を経営理念に掲げる東京センチュリーでは、今後もさまざまな事業を通じて、「脱炭素社会」の実現に貢献してまいります。
・東京センチュリーグループが行う「サステナビリティへの取り組み」の詳細はこちらから
https://www.tokyocentury.co.jp/jp/csr/
※記事の内容、肩書などは掲載当時のものです
おすすめ記事
———10年後の社会はどうなる? 社長×社員5人が語る持続的成長
2024年11月12日
東京センチュリーでは、2016年から「循…
真のグローバル企業になるために必要なコミュニケーションとは?
2024年8月21日
近年、企業のグローバル化が進む中で、コミ…
2024年2月1日
ニュースや新聞でもよく耳にする「ESG」…