
近年、企業のグローバル化が進む中で、コミュニケーションの重要性がより高まっています。世界30以上の国と地域で事業を展開する東京センチュリーでは、昨年度、中期経営計画の浸透を目的に、5カ国9拠点の連結子会社で初のタウンホールミーティングを実施しました。現場と経営の直接的な対話の場となるタウンホールミーティングは、組織の変容を促し、従業員エンゲージメントの向上を図るためのコミュニケーションの手段として注目されています。今回は、国際事業分野を管掌する専務執行役員の北村登志夫さんと、国際業務部長の冨永容子さんへのインタビューをお届けします。

国際業務部長 冨永 容子さん(左) と 専務執行役員 国際営業推進部門長 兼 国際営業部門長 兼
CSI Leasing, Inc. Director and Vice Chairman北村 登志夫(右)さん
タウンホールミーティングでグローバル社員への中期経営計画の浸透を促す
――昨年度、初めてタウンホールミーティングを開催されたとのことですが、実施の背景について教えてください。
北村専務(以下、敬称略):昨年5月に策定した「中期経営計画2027」では、TC Transformation(以下、TCX)を基本方針に掲げています。「自らを変革し、変化を創造する」というテーマに込めた想いを正しく理解し実践することはそう簡単ではありません。当社の海外拠点で働く約2,200人のグローバル社員への浸透を図るためには、何らかの施策が必要でした。
冨永部長(以下、敬称略):TCXの重要性を理解していただくためには、メッセージやビデオレターを送るだけといった一方通行の発信だけでなく、部内で議論を重ねた結果、顔と顔を合わせたダイレクトコミュニケーションが最も期待できるのではと、タウンホールミーティングのアイデアが生まれました。
――準備はどのように進めたのでしょうか?
冨永:準備に向けて動き出したのは昨年の6月です。プログラムを考える上で、国際事業分野のトップである北村専務からのメッセージはやはり欠かせないと、動画の制作に取りかかりました。どうすればグローバル社員の方々に響くメッセージを届けられるだろうと何度も考え直し、プロの映像制作会社に依頼して出来上がった動画は、手前みそながら実に素晴らしい出来栄えになったと思っています。
――ビデオメッセージはどんな内容だったのですか?
北村:TCXを中期経営計画2027の重要な基本方針として掲げていますが、これまで「Transform」していなかったというわけではありません。私たちは以前からあらゆる観点で変革に挑んでおり、その積み重ねで今の成長があるということをメッセージに込めました。
また、「変革」は組織や事業展開だけを対象としているわけではありません。一人ひとりが自分自身を変革すること。その過程で何かを捨てるという決断が求められることも含めて、果敢にチャレンジをしていこうと呼びかける内容でまとめられています。

冨永「メッセージ自体は大真面目に考えながらも、『北村専務のスティーブ・ジョブズ化プロジェクト』と名付け(笑)
視聴する方が前のめりに引き込まれるよう演出にも力を入れました」
大切なのは「パッション」「スマイル」「リスペクト」、シンプルなメッセージで想いを伝える
――タウンホールミーティングは昨年秋のシンガポールを皮切りに、その後、マレーシア、フィリピン、タイ、米国と、連結子会社がある5つの国で実施されました。国や事業内容によって受け取り方に温度差があるようにも感じますが、実際はいかがでしょうか?
冨永:各地で行われたタウンホールミーティングは、先ほどお話ししたビデオメッセージからスタートしたのですが、メッセージに込めた「パッション」「スマイル」「リスペクト」の3つのキーワードがどの国でも非常に反応が良かったです。
北村:このキーワードは組織内外のメンバーと協調し、組織やプロジェクトを動かすために私が普段から大切にしている心構えで、全てのベースだと考えています。歴史や文化の違いはあれども、きっと世界共通で通じるだろうという想いを込めました。タウンホールミーティングの実施以降、拠点を訪れた際に現地の方から3つのキーワードを耳にすることが頻繁にあり、想いがしっかり伝わったとうれしく思っています。

北村「ビジネスの話も良かったけど、「パッション」「スマイル」「リスペクト」の3つのキーワードの意味が
とても良かったと言ってくれる社員が多かったことに驚きました」
――現地でのタウンホールミーティングの様子についても教えてください。
冨永:楽しんで準備を進めながらも当日までは「何も反応がなかったらどうしよう」と、不安がなかったわけではありません。しかしいざスタートしてみると、どの国の方々も積極的に質問を投げかけてくれて、双方向のグローバルコミュニケーションがまさにこの場で行われていると、手応えを感じることができました。
北村:現地でのスピーチは、事前に各拠点の責任者の方々にヒアリングして、拠点ごとに内容を変えてお話ししました。例えばシンガポールは歴史の古い拠点でしたので、長く働いている方の名前を挙げてねぎらいの言葉を盛り込んだり、タイでは「社内行事があるなら私も誘ってほしい」と冗談めかしながら笑いを誘ったりと、肩肘張らない雰囲気になるよう心がけましたね。
そのかいあって、事業展開に関する質問だけではなく「東京で桜を見るなら?」「おすすめの焼き肉店は?」と、フランクな質問も多く頂きました。役職、キャリア、国と地域の垣根を越え、グローバル社員の方々との距離がぐっと縮まったと実感しています。

タウンホールミーティングの様子
冨永:次回のタウンホールミーティングの実施は未定ですが、今回のアンケートの結果で「また参加したいと思いますか?」という設問に対して回答者の「Yes」が100%だったことはすごくうれしいことでした。
「メッセージの内容が視覚的に理解できた」「拠点のことを理解してくれている」「本社との交流の貴重な機会になった」といったコメントも多く、中期経営計画2027の浸透と、TCグループの一体感の醸成に少なからず寄与できたのではないかと、成果を実感しています。

グローバル社員のマインドに訪れた変化について
――今年度はコロナ禍で中断していたグローバル研修が再開されました。集まったグローバル社員に昨年度のタウンホールミーティングの影響は見られましたか?
北村:今年の6月に行われたグローバル研修では、タウンホールミーティングを実施した5カ国からマネジメント層が集まっています。この研修では、各拠点でどうTCXを実践していくのか、それぞれにプレゼンしてもらうプログラムがありました。TCXは、事業展開の観点から言えば「独自性」「差別化」と言い換えることができます。各自のプレゼンはそのことを踏まえた内容で構成されており、これからの成長を目指す意欲が十分に感じられるものでした。
冨永:各拠点でどんな事業を展開しているのかを互いに教え合い、拠点同士でトレーニングの施策を考えたり、プロジェクトを組んだりといった、連携のアイデアも盛んに議論されていました。国と地域で異なるマーケットの動向を把握し、拠点ごとの強みや情報を共有するなど、グループの一体感の醸成にもつながりました。

冨永「グループ横断的な事業展開の可能性が広がるのでと期待が高まっています」
グローバルコミュニケーションを軸に、目標の超過達成に果敢に挑む
――最後に、中期経営計画2027の達成に向けた意気込みをお願いします。
北村:2023年はデータセンターへの投資、FMVリースやITAD(IT資産の適正処分)サービスへの注力といった、IT分野への事業展開を拡大することができました。米国では樹木整備車両のリース事業など、ニッチな市場をターゲットにした事業も加速しています。これらの事業を軌道に乗せながらTC Xを実現することができれば、中期経営計画2027で掲げる国際事業分野の目標を大幅に超過達成することも十分に可能だと、ポジティブに認識しています。
言葉も文化も違う社員が同じ方向を向いて同じゴールに向かっていくことは、とてもチャレンジングなことですが、真のグローバル企業を目指して取り組んでいきたいと思います。
タウンホールミーティングでは「海外拠点の責任者は日本からの駐在員しかなれないのか」というご質問を頂きましたが、決してそのようなことはありません。本社と一体になってスムーズな意思決定を行うためには、現地のグローバル社員の登用も検討していくことが必要です。
引き続き現地の方々とざっくばらんに意見交換しながら、独自性を際立たせることで組織の成長に貢献してまいります。
冨永:昨年度のタウンホールミーティングは、基本的に拠点の全従業員が出席していただく形で実施しました。拠点によってはミーティング後にスナックタイムを設け、地元のスイーツや定番料理を用意してくださるなど、一緒に盛り上げていただけたこともうれしかったです。
昨年ほどの規模ではなくても、例えばマネージャー層だけを対象に、あるいはプロジェクトごとにスモールで実施するという方法もあると思います。国と地域を問わず、誰もが東京センチュリーグループの一員であると心から感じていただき、中期経営計画2027の達成に向けて一丸となって突き進めるよう、これからも基盤の整備に励んでまいります。


北村 登志夫(きたむら・としお)
専務執行役員 国際営業推進部門長 国際営業部門長 CSI Leasing, Inc. Director and Vice Chairman
2013年入社。2016年執行役員就任。タイのオートリース資産買収やフィリピンでのオートリース会社への出資などのプロジェクトに従事した後、米国CSIの買収および現地での経営管理を経て帰国、2020年4月より現職を務める。

冨永 容子(とみなが・ようこ)
国際業務部長
2023年入社。2024年4月より現職。大手リース会社においてアジアや欧米各地の現地法人の支援やクロスボーダー・ファイナンスなどの分野で積み重ねた経験を生かし、当社でも海外ビジネス関連業務に携わる。
※記事の内容、肩書きは掲載当時のものです。
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