東京センチュリーの事業の核となっているのが、モノの価値や市場の可能性を深く見極める力、すなわち「目利き力」です。この連載では、東京センチュリー(以下、「TC」)が提供しているプロダクトにおいて、どのような「目利き力」が発揮され、社会に貢献しているのかを探っていきます。
連載第8回は、わたしたちの生活に欠かせない海上輸送を支える「船舶事業」です。TCでは、船舶へのファイナンスにとどまらず、自社で船を保有し貸し出すビジネスなど、リース会社の枠を超えた多様なソリューションを展開しています。今回は、船舶事業部第二グループの江川さん、田代さんに、船舶事業の概要や2026年4月に竣工した待望の新造船「HERMES CENTURY(エルメスセンチュリー)」の舞台裏、自社船保有だからこそ培われる「目利き力」について聞きました。

(左から)船舶事業部第二グループ 田代さん、江川さん
「ファイナンス」×「船舶保有(船主業)」が放つハイブリッドな強み
ーーまず、TCの船舶事業の概要と、他社との違いについて教えてください。
江川さん(以下、敬称略):TCの船舶事業には、大きく2つの柱があります。1つは、国内外の船主(船を所有する企業)や海運会社に対して資金的サポートを行う「船舶ファイナンス事業」。もう1つは、当社自ら船を保有し、海運会社に貸し出す「自社船事業(船主業)」です。リース会社でありながら、金融のサポートだけでなく、自らアセット(資産)を保有しているのが大きな特徴です。現在、船舶事業部だけで6隻の自社船を保有・管理しており、他社との共同保有を含めると30隻弱の船舶をグローバルに展開しています。
田代さん(以下、敬称略):さらに2026年3月には、世界的にも大きな船主・海運会社であるモナコのCTMグループへの出資も行いました。私たちは資金を提供するだけのファイナンサーにとどまりません。自らアセットリスクや事業リスクをとり、海運全体のインフラを直接・間接的に支える「一歩踏み込んだ船舶事業」を目指しています。
ーーなぜリスクをとってまで「自社船」を保有しているのでしょうか。
江川:それこそが、当社の「目利き力」の源泉でもあるからです。実際に船主として海運業の現場に入り込むことで、「10年経過後の船(船齢10年)のコンディションはどう変化するか」「現場の船主は普段どういうリスクを感じ、何を望んでいるのか」といった、書類や数字の上だけでは決して見えない「現場目線」「船主目線」が身につきます。この自社船事業で蓄積したノウハウや経年劣化に関するリアルな知見があるからこそ、適切なリスク管理ができるのです。

江川「数字だけのファイナンスから脱却し、リスクを共にするからこそ、真の目利き力が養われます」
10年ぶりの新造船「HERMES CENTURY」が大海原へ
ーー2026年4月には、TCにとって10年ぶりとなる新しい自社船が竣工したそうですね。
田代:はい。2026年4月に竣工した新たな自社船が「HERMES CENTURY(エルメスセンチュリー)」です。「HERMES(エルメス)」はギリシャ神話で旅や航海の神様を意味し、そこに当社の「CENTURY」を冠しました。
本船は載貨重量8万トン級の「ばら積み船(バルカー)」と呼ばれるカテゴリーの船です。船内には小学校の体育館ほどの大きさと深さを持つ巨大な船倉(ホールド)が7つ設けられています。ここへ、私たちの生活に不可欠な一次産品である石炭や穀物、鉄鉱石などの貨物を梱包せずにそのまま積み込み、大量に輸送します。

HERMES CENTURY外観
ーーTCの船舶事業は、社会に対してどのような貢献を果たしていると考えていますか。
江川: 四方を海に囲まれた島国である日本において、輸出入の大部分を頼っている海上輸送は、生活に直結する絶対的なインフラです。自ら携わった船が運ぶ石炭が電力となり、人々の暮らしを支えている。その生活の土台に関われているということに、社会貢献と責任を日々実感しています。
だからこそ、社会に対する責任として「環境負荷への配慮」にも力を入れています。今回の「HERMES CENTURY」は、造船所の最新鋭の設計技術により、水流の抵抗を極限まで減らした船体形状を採用し、高効率エンジンを搭載した「エコシップ」です。優れた燃費性能を実現し、CO2や排ガスの抑制に大きく貢献しています。次世代燃料へのシフトを見据えつつ、いま私たちができる環境対応に全力を尽くしています。
既存船を蘇らせる「レトロフィット」と、オフィスからの運航モニタリング
ーー環境負荷の低減において、TCの船舶事業の強みである「目利き力」はどのように発揮されていますか。
田代:新造船の導入による環境対応はもちろん重要ですが、それと同じくらい「今動いている既存の船を、いかに環境に優しくアップデートするか」という点にも注力しています。

田代:船は自動車や飛行機と違い、航海中は24時間365日、常にメインエンジンが動き続けています。さらに過酷な塩水にさらされるため、船体には付着物がつきやすく、経年劣化によって燃費性能は徐々に低下してしまいます。そのため、委託先である船舶管理会社やクルーと密なコミュニケーションをとり、日々の適切なメンテナンスによって消耗の原因を取り除くことが大切です。
加えて、私たちは「レトロフィット(既存船に最新装置を後付けすることで、性能を改善する手法)」にも取り組んでいます。エンジンの性能を底上げして省エネ化を図るなど、稼働中の船に対しても適切な投資を行うことで、船体全体の燃費性能を向上させています。地球規模での排ガス抑制や脱炭素化といった環境課題に、直接的なアプローチを続けられるのも、自社でアセットを管理している強みですね。

田代「レトロフィットによって、地球規模の脱炭素化に直接的に貢献することができます」
バックグラウンドの多様性が生む、オンリーワンの「船舶プロ集団」
ーーこの事業に携わる上での「やりがい」や、思い出に残っている瞬間を教えてください。
やはり「HERMES CENTURY」の竣工は、胸に迫るものがありました。発注段階の何もない状態から深く関わってきたあの巨大な船が、ついに完成し、初めて大海原を力強く動き出す姿を目の当たりにしたときは、言葉にできないほどの感動を覚えました。

江川

田代
私はオフィスにいるとき、自社船のリアルタイムな位置や運航状況がわかるAIS(船舶自動識別装置)のモニターを常に開いています。安全航海のための指示系統を乱さないよう、基本的な運航は専門の管理会社に委託していますが、私たちは船主として、間接的に最終的なジャッジを下す「司令塔」の役割を担っています。気象状況やルート選定など、多くの関係者と協議しながら最終決定を下す中で、調整に苦労することもあります。しかし都内のオフィスにいながらも、自らの判断がリアルタイムに地球の裏側にいる巨大船の進路となって現れる。そこがこの仕事の難しさであり、他では味わえないダイナミックなやりがいです。

ーーお二人の経歴は全く異なると伺いました。チームの雰囲気はいかがですか。

田代
私はかつて、海運会社で航海士としてLNG船やLPG船に乗船していました。TCに転職したのは、前職での海の経験を生かしつつ、以前から関心のあった金融・ファイナンスの知見をハイブリッドに培えると考えたためです。海運業界は金融、造船所、海運会社など多様なプレイヤーで成り立っていますが、最終的な目標はすべて「安全に、効率よく船を動かすこと」に凝縮されます。立場は違えど、共通のゴールに向かってアプローチできるのが面白いですね。
私は新卒入社から10年間、国内のリース営業一筋でした。その後の異動だったため、船の知識は完全にゼロからのスタートでした(笑)。「この巨大な船が、自分たちの暮らしにどうつながっているのか」をイチから勉強し、現場の造船所などに足を運ぶ中で、その圧倒的なスケール感に魅了されていきました。現在の自社船チームは、私のような生え抜きの金融・リース出身者もいれば、田代さんのような元航海士、あるいは船舶管理会社や船主業の専門会社からのキャリア採用メンバー、そして新入社員まで、非常に多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルで構成されています。お互いの専門性という強みをリスペクトし合える、とても和気あいあいとしたチームです。

江川
金融と海運の架け橋となり、唯一無二のグローバルパートナーへ
ーーこれからの未来に向けた目標を教えてください。
これまでは「ばら積み船」がメインでしたが、今後は環境対応を含めた時代のニーズを捉え、他の船種への投資も含めたアセットの拡充を進めていきたいと考えています。「ファイナンス」から「自社船保有(船主業)」まで、一気通貫で多様なプロダクトを提供できる強みを生かし、「専門性」と「多様性」を核とした、「総合ソリューションプロバイダー」として、世界中のお客さまの課題を解決する唯一無二のパートナーを目指してまいります。

江川

田代
リース会社でありながら、ここまで本格的な「船主業」をグローバルに手掛けている企業は他にありません。自社船のラインナップをさらに充実させ、海運業界内で「船主としての東京センチュリー」の認知度を圧倒的なものにしていきたいです。このユニークでオンリーワンなハイブリッド体制を、多くの仲間たちと共にさらに大きく成長させていきたいですね。

※ダイナミックな「HERMES CENTURY」の航海の様子はぜひこちらの動画をご覧ください。

江川雄久(えがわ・たけひさ)
船舶事業部 第二グループ 次長
2001年新卒入社。約10年間、国内のリース営業に従事。2010年より船舶事業部に異動し、船舶ファイナンス業務や自社船事業の立ち上げ、保有している船舶の管理業務を経験。2022年より現職。

田代郷史(たしろ・ごうし)
船舶事業部 第二グループ
2023年中途入社。新卒で海運会社に入社し、航海士としてLNG船・LPG船に乗船。その後、陸上にて船舶の技術開発などに従事する。2023年より東京センチュリーに入社し、これまでの現場経験を生かして船舶事業に携わる。
※記事の内容、肩書きは掲載当時のものです。
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