DX(デジタルトランスフォーメーション)は、すでに様々なビジネスシーンで見られ、コロナ禍においてさらに加速しています。さらに劇的な変革が予想される未来に向けて、私たちはどのように対応するべきでしょうか。2020年12月に新設されたDX戦略部を統括する吉野康司専務に話を伺いました。
全世界に押し寄せるデジタルの波。アジアはまさに激動の時代。
――吉野さんは長年、国際事業分野に携わってこられました。日本と海外のDXをどのように見ていますか?
世界中でDXが加速しています。私自身、この現実を肌で感じることが何度もありました。
特にアジアは激動の時代です。中国や東南アジアの発展は驚くべきもので、少しずつ便利になるような感覚ではなく最新の技術がいきなり市場に広まる「リープフロッグ(蛙飛び)現象」が、多くの分野で起きています。
メッセージ機能はもちろん、買い物での支払いや予約など、生活に必要なほとんどのサービスを利用できるスーパーアプリが登場し、銀行口座よりスマートフォンのQRペイメント口座を持つ人の方がはるかに多い国もあります。
――国内のDXの状況はいかがでしょう?
インフラが整い、例えばほとんどの方が銀行口座を保有し支払い方法に不自由しない日本では、海外ほどの急激な変化は起きにくいと考えられていました。しかし、日本でもQRペイメントはあっという間に普及し、スマホはより一層必要不可欠なインフラになったように感じます。デジタル技術には国境の壁が低いので、海外由来のデジタルサービスが昔ながらの商売を窮地に立たせているケースは、すでにどのような業界でも見られます。特にコロナ禍において、進展は加速しています。
――ディスラプト(破壊)が起きていると。
私たち東京センチュリーが生きる金融の世界は、特に異業種からの参入によりディスラプトが起こりやすいと言われています。
もともと当社でもリモートワークを視野に入れた、オンラインミーティングシステムの整備や書類の電子化やRPAの広範な導入など、IT化、デジタル化、オンラインでのサービス提供に取り組んできました。アフターコロナの世界を見据えると、ビジネスモデルそのものを変革する必要が生じたと感じています。この時代の荒波を乗り越えて進化するためには、一人ひとりが今の仕事に危機感を持ち、「何ができるか?」ということをいつも探し続ける必要があります。
モノを介在させるファイナンスサービスで、ユーザーとパートナーをつなぐ
――具体的にはどのような変化が起きているのでしょうか。
産業界では以前から「顧客とつながる営業」といったテーマがありました。これは顧客を囲い込み、関係を永続的に拡大できるものに変革すること、顧客ニーズをより深く理解しサービスの向上に役立てることが主な狙いです。この動きはBtoCだけではなく、BtoBの企業にも広がっています。
「モノ売りからコト売りへの変革」も大きなテーマです。シェアリングサービスが普及し、ユーザー側の意識も「所有すること」から「必要な時に利用できれば良い」というマインドに変化しています。
また、IoTの進展やスマートフォンの普及など、デジタル技術の進化によって、個々のニーズや使用傾向を瞬時に解析することが可能になりました。これらのデータをAI技術で分析し、サービスの改善や進化に活用することも可能になりつつあります。利便性を上げることができれば、顧客とのつながり方もより深くなるため、今後これらのテーマはさらに大きくクローズアップされていくと考えています。
――このような変化の中で、東京センチュリーはどのように貢献していけるでしょうか。
東京センチュリーは「モノを介在させた金融機能を提供できる企業である」ということは大きなポイントだと考えます。
当社の祖業であるリースは、設備を当社が所有し、お客さまにご使用いただき、毎月使用料金をお支払いいただく、いわゆる「コト」ビジネスの先駆けです。当社の持つリースやサブスクリプションの機能により、産業界のテーマである「お客さまと継続的な関係を構築する」ソリューションとして貢献できるのではないかと考えており、提案活動を行っています。デジタル技術を生かしたソリューションで、エンドユーザーにもパートナー企業にもメリットのある新しいビジネスモデルを生み出し、より利便性の高い、効率的なサービスが提供できるはずです。
また、SDGsの視点で考えれば、リースやサブスクリプションにより、設備をリユース・リサイクルして活用することで環境負荷を抑えることができます。SDGsやサステナビリティ推進の機運の高まりにより、メーカー各社では、自社製品を最終処分まで管理し、リサイクルしていくことを志向しており、この観点でもリース・サブスクリプションという機能が貢献できる可能性を秘めています。
企業として仕組みを根本から⾒直し、新たな価値を⽣み出すために
――DXを推進するために組織はどうあるべきでしょうか。
DX推進はすべての方々にかかわりのあることですから、東京センチュリーグループにおいては情報共有、連携が重要です。スムーズな連携を図るため、DX戦略部のメンバーの多くが他の部門との兼務となっています。
これまでの仕事の進め方や体制そのものを根本から見直し、新しい技術によって事業を成長させ、国内はもちろん世界で通用する競争力を身につける。このような組織づくりの使命を担っています。
これまでにない新しいビジネスモデルと、もっと便利で役立つサービスを送り出すことを推進するとともに、DX推進を支える人材育成やDXに対する機運を高めるサポート体制を整えるなど、様々な方面で役割を果たしたいと思います。
DXは現在進⾏形の概念。本に頼らず、⽣きた知識を⾝につける姿勢が⼤切
――この先、DXによりどんなビジネスが誕生すると予測していますか?
これからはすべての人、業界がデジタルと無関係ではいられません。
AIやビッグデータを活用したロボットやサービスは人手不足も相まってこれから拡大します。配送ロボット、レストランでの配膳ロボットなど広い範囲で一般化しそうです。無人コンビニなど小売業でもスマホと組み合わせたサービスが発展しそうです。
地球温暖化など環境問題への対応を踏まえれば、EV(電気自動車)はさらに普及するでしょう。充電設備をはじめとして、EV周辺に様々なビジネスが立ち上がるはずです。どのようなニーズがあるかといったこともおのずと浮かび上がってくるでしょう。
シェアリングエコノミーもどんどん拡大していきそうです。
これらの新しいビジネスの多くが設備や機械などモノを必要とするものですので、東京センチュリーとしてもビジネスチャンスを感じています。
――DXを推進しビジネスに変革を起こすために、一人ひとりには何が求められるのでしょうか?
DXとは「デジタル技術によりビジネストランスフォーメーションを実現すること」です。
電子契約やテレワーク、オンラインミーティングの実現は大切なステップではありますが、これらをゴールとせず、世界の動向にアンテナを張り巡らせて最新の情報を自分自身の仕事に活かそうとする姿勢が大切です。
DXは答えがすでに固まっているものではありません。本やすでにある情報から答えを探すのではなく、生きた知識を身につけ、そこから生まれたアイデアを共有し、様々なスキルや知見を結集してスピード感を持って実現していくことが重要です。
かかわり合うすべての方々と社会全体に貢献できるよう、DX戦略部としても全力を尽くしてまいります。
吉野康司(よしの・やすし)
専務執⾏役員 経営企画部⾨⻑補佐 兼 DX戦略部長
⻑年、東京センチュリーにおいて国際事業を担当、特に東南アジアを中⼼にデジタルビジネスを推進。その知⾒を活かし、2020年度より東京センチュリーのDX推進を統括。
※記事の内容、肩書などは掲載当時のものです
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