
2022年3月、東京センチュリー(以下、TC)は、地域金融グループとして国内最大規模を誇るふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)とリース事業に関する資本業務提携契約を締結し、FFG傘下の十八総合リースの株式を一部取得しました。この提携を機に十八総合リースは「FFGリース」と商号を変更し、2024年4月にFFGおよびTCからの出資比率をおのおの50%とし両社の持分法適用関連会社となりました。FFGリースの事業展開は、企業として描くエリア戦略の推進と地域活性化への貢献を両立する好事例と言えるかもしれません。同社の代表取締役会長を務める田村さん、TC福岡営業部・小谷さんへのインタビューをお届けします。
(左から)TC福岡営業部 小谷さん、FFGリース 田村会長
圧倒的な知名度と信用力、そして膨大な情報量が最大のストロングポイント
――TCがFFGリースへの資本参加に至った背景について教えてください。
田村会長(以下、敬称略):現職の前にTCで営業第二部門長を務めていた頃から、国内リース市場はすでに飽和状態にあるという強い懸念がありました。持続的な成長のためには、エリアごとに特化した戦略の強化が必要不可欠。検討を進める中で特に魅力を感じたのが九州エリアでした。福岡では博多や天神地区で再開発が進み、半導体製造において世界最大手である台湾のTSMCが熊本に進出するなど勢いは増すばかりで、国内外からの投資がさらに集中していくことが予測されます。
一方、FFGは多様化するファイナンスニーズに対応すべく、グループ横断的なリース事業を展開し、顧客サービスの拡充につなげたいという思惑がありました。両社がお互いを課題解決に必要なパートナーであると認識していたことに加え、以前から親密な関係性が構築されていたことから、このような問題意識の共有と意思決定がスムーズに進み、FFG傘下の十八総合リースへの資本参加に至った次第です。
――FFGリースの事業展開において、FFGとTCはそれぞれどのような役割を担っているのでしょうか?
田村:FFGは九州の4つの地方銀行を傘下に置く国内最大規模の地域金融グループであり、福岡や熊本、長崎をはじめとした九州広域にネットワークが構築されています。圧倒的な知名度と信用力、そして膨大な顧客基盤をフル活用することがFFGリースの事業展開において最も重要であることは間違いありません。
小谷:FFGリースは車両や建設機械の他、情報機器や医療機器といった多岐にわたる物件を取り扱っています。そういった多種多様な物件をお客さまへリースするに当たり、FFGリースがこれまで以上に付加価値の高い金融サービスを提供できるよう、TCグループが蓄積してきたノウハウを移植することが当社の役割です。
――現在、特に注力している取り組みについて教えてください。
小谷:例えば補助金制度を活用したリーススキームの確立などはTCの得意分野です。これまでTCが培ってきたノウハウの浸透を図るため、FFGリース出向中のTC社員と連携し提案活動をサポートできるような取り組みを進めています。
田村:TCが資本参加してから、現在3年目を迎えています。その間、北九州、熊本、久留米に支店を新たに開設しました。時期は未定ですが、近々九州南部地域での支店開設も予定しています。他にも快適なIT環境を整備するために基幹システムを刷新し、オートリース分野の強化・拡充のため事業部門として独立させるなど、幾つものアイデアを形にしてきました。一人ひとりへの周知を徹底していくと同時に、企業としての成長に必要な要素を補強していけるような施策を打ち出していきたいと考えています。
田村「社内の雰囲気が変わってきているのはFFGリースの社員も感じているようで、
今後への期待感が高まっています」
地域の市況、リース業態の特性。緊密な連携により双方が新たな知見を獲得
――FFGとの協業体制を確立する過程ではどんな難しさがありましたか?
小谷:両社間の合意を形成するための協議では、出席しているメンバーが経営に近い方々ばかりで緊張の連続でした。特に本件は不動産をはじめとして異なる事業分野の方の協力が不可欠でした。私自身、これまでの業務で経験がなく知識がない内容でしたので、資料作成などの場面で頼り切りになってしまう部分もありましたが、「ひたすら協力をお願いするしかない」と、ある意味、開き直ってその場に臨んだことをよく覚えています。
田村:このプロジェクトは国内リース、オートリース、不動産などの異なる分野から多くの方々が集まった、TCの過去の事業の中でも非常にまれな案件です。こうしたビジネスに関わることができる点で、小谷さんの成長につながるのではと考え、私からプロジェクトへの参画を打診しましたが、これまでとは異なる仕事の進め方に苦労したのではないですか?
小谷:そうかもしれません。ただ、キャリア10年に満たない段階で、多くの役員クラス、部長クラスの方々と頻繁にコミュニケーションを取りながらプロジェクトを推進する機会を得られたことは、今後に必ず活きる貴重な経験になったと思います。
田村「本社で勤務していた頃から、小谷さんは交渉・傾聴・提案・事務処理と、
全方位にバランスが良く高い能力を持っているなと感じていました」
――FFG側の担当者の方とも緊密な連携があったそうですね。
小谷:はい。地域の市況や金融業界の事情など、たくさんのことを教わりました。私からは、事業計画書の作成で少しはお役に立てたのかなと手応えを感じています。
出資比率の変更の際に、FFG側でFFGリースの事業計画を作成する必要があったのですが、FFGの担当者の方は銀行員のため、リース会社の収益構造や収益をどのように予測すればいいのかと戸惑われていたようです。そこで、例えばリースの場合、銀行の貸出と異なり、契約期間が終了を迎えても再リースとなり契約が延長されるケースがあるなどリースならではの考え方をお話しして、事業計画書の作成を支援することができました。
小谷「FFGの担当者の方とは抱えている悩みや、やるべきことが共通しており、
協力しながら進められたことも心強かったです」
各組織の英知を結集し、地域からも社員からも信頼される九州ナンバーワンのリース会社を目指す
――今年7月に、FFGリースは子会社のリージョナルインベストメント福岡株式会社を設立しています。今後の事業展開についてお聞かせください。
田村:より幅広い視点で、新たな領域にも果敢にチャレンジしていきたいという思いからリージョナルインベストメント福岡は設立されました。当面は不動産に絞った事業展開ですが、TCグループ全体で蓄積されたノウハウをうまく移植できれば、不動産、リースといった枠組みを超えた高付加価値のサービスを提供することも将来的に可能であると考えています。オートリース事業では、TCのグループ企業である日本カーソリューションズ(以下、NCS)との連携により、税務や保険といった分野のサービスまで組み込んだ提案の形が、すでにつくり出されています。こういった事例を積み重ねながら、地域経済に貢献できるよう存在感を発揮してまいります。
――最後に、これからの抱負をお願いします。
田村:FFGリースには、地元の金融事情に明るい4つの地方銀行や、リースに関する深い知見を持つTC・NCSから集結した優秀な人材がそろっていると自負しています。プロパー入社、キャリア採用の人材も日々成長しています。多様な人材が一体感を高め、できることを着実に増やしていく。そして、お客さまに選ばれ頼られる存在となる。地域の活性化につながる事業活動で業績を拡大し続けることは大前提として、所属する全ての方々への処遇やエンゲージメントの向上に努め、誰もがモチベーション高く働き続けられるような、「九州でナンバーワンのリース会社」を目指してまいります。
小谷:自身の立ち位置は、FFGリースとTCをつなぐパイプ役だと考えています。出向しているTC社員の方々から課題を受け取り、その課題をTCに共有して解決策をフィードバックする。そんなスタンスでFFGリースの成長と地域活性化への貢献を果たすことができれば、これからのキャリアにおいても大きな自信になると確信しています。地元企業の方々をターゲットとしたプロダクトはもちろんのこと、FFGリースとしては実績の少ない官公庁向けの取り組みなども視野に入れながら、FFGリースがあらゆるニーズに応えられるような金融・サービス企業となれるよう貢献してまいります。
(左から)FFGリース 小玉社長、リージョナルインベストメント福岡 羽山副社長、
TC 小谷さん、FFGリース 田村会長

田村 利彦(たむら・としひこ)
FFGリース株式会社 代表取締役会長
1987年、東京センチュリー(旧東京リース)入社。都内、福岡、仙台、札幌などの各拠点でキャリアを重ね、その後、首都圏営業部門(現:営業第二部門)、コーポレート営業部門(現:営業第一部門)で要職を務める。営業第二部門長を経て、2024年4月よりFFGリース株式会社の代表取締役会長に就任。

小谷 淳也(こたに・じゅんや)
東京センチュリー株式会社 営業第二部門 福岡営業部
2016年入社。国内リース事業分野の営業として都内、千葉県湾岸エリアを担当した後、2021年12月より福岡営業部に異動。福岡では地元大手企業や九州全域の官公庁を顧客に情報機器、照明設備などのリース案件を手がける。
※記事の内容、肩書きは掲載当時のものです。
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