仕事を知る

PROJECT STORY 02

挑む!
国家プロジェクトの参入

横浜支店  田中 大  ストラクチャード・ファイナンス部  横山 慶次郎/市瀬 友香

PROFILE

※所属部署名は取材当時のものです。

STORY 01

全国初のスキームは
わからないことだらけ!?

2013年7月、岡山県玉野市の三井造船玉野事業所で、独立行政法人航海訓練所練習船の命名・進水式が行われた。大成丸と名付けられたこの船のオーナーは、東京センチュリーである。

公的機関の船舶を、なぜ民間企業が共同所有しているのだろうか。

事の始まりは2011年9月に遡る。航海訓練所が公示した≪内船用練習船建造に係る資金調達、共有建造及び船舶賃貸借に関する業務≫という企画競争入札にあった。航海訓練所は、横浜市中区にある。公示を見つけたのは、そのエリアを担当する横浜支店の田中だ。

東京センチュリーをはじめ、それまで取引のあった企業を中心に、入札説明会の参加要請メールが届いた。説明会の日程は、5日後であった。公示だけでは詳しいことは分からないが、公的機関の船舶であり、しかも単なるリースではない。船舶のリースについて、たくさんの実績はあるものの、公的機関と船舶を共有するスキームは前例がない。船は、完成して引き渡す前に火災などの事故が起こる可能性もある。リスクをどちらが取るのか。頭を悩ます問題は、山積であった。

説明会に参加して、問題は現実のものとなった。しかも、入札日まで1ヶ月。

田中は当時を振り返った。「入札日までたったの1ヶ月。確かに新しい案件、しかも船員養成を専門に行う練習船は海洋立国日本の発展に必要な船舶であり、取り組む意義は大きい。でも1ヶ月間に、まったく新しいスキームを組み上げて提案できるのか、正直言って半信半疑でした」

STORY 02

部署間連携で窮地を乗り切れ!

説明会終了後、支店長と田中はすぐ、東京・秋葉原の本社に向かった。提示されたスキームの骨子は、建造期間2年、共有期間10年、満了後に無償譲渡。出資する民間企業と航海訓練所が練習船を共有し、民間企業が所有する部分を訓練所に賃貸するという、予想通り前例のない複雑な契約スキームであった。

田中がまず相談したのは、ストラクチャード・ファイナンス部である。同部は、取引先のニーズに合わせ付加価値をつけたファイナンス・スキームを提供する部署だ。

前例のない複雑なスキームであり、半ば諦めかけていたが、ストラクチャード・ファイナンス部の対応は意外にも反応が良かった。直接の担当だった市瀬とその上司の横山は、「面白いんじゃないの。一緒に考えようよ。」と答えたのだ。当面の難関は、直ぐに提出しなければならない質問書の作成だ。

質問書から入札にどれだけ真剣に取り組んでいるかが判断される。船舶営業部、経理部、法務部、ソリューション支援部といった関連部署に協力を求め、最終的に47項目もの質問があがった。

ストラクチャード・ファイナンス部では、これまでも公的機関向けの企画競争入札の実績は数多い。しかし、今回の航海訓練所の要望は自由度が高いものであり、難易度は高い。必然的に質問項目も増えていった。

日程に余裕がないため、質問書の回答を待ちながらも、同時に提案書の検討作業は進められた。まず決めなければならないのは、どんなストラクチャーでいくか。航海訓練所の入札説明書・仕様書によれば、金融機関とコンソーシアム(※1)を組むことが前提とされていた。果たして考えているフォーメーションでいいのか……。時間だけが過ぎていく。(※1) コンソーシアムとは、特定の目的のために複数の企業等で形成される共同事業体のこと。

提案書の提出期限から逆算すると、直ぐに社内の審査部門を始め、関連部署に説明する必要がある。だが、最終的な結論は、航海訓練所からの回答を待ってからでなければ出せない。そこで市瀬は、考えられる全てのストラクチャーを検証した。どれに決まってもいいように、それぞれに複雑な金利計算も行いつつ……。
質問の回答が得られたのは、提出期限の数日前となった。その内容を見て、最終的に、金融機関を使わないフォーメーションでいくことに決めた。航海訓練所にもコストメリットが大きいと判断したからであった。

ストラクチャード・ファイナンス部と連携しながら、航海訓練所の担当者として、相手の立場になりきることが重要だ。田中は感じた「今回のスキームでは、我々は発注者であると同時に、航海訓練所と船舶を共有するパートナーとなる。航海訓練所と想いを共有しないといけない。」と。
田中と市瀬を中心に、関連部署をメンバーとする横断的なプロジェクトチームの想いを込めた提案書が出来上がったのは、提出期限前日の深夜であった。

STORY 03

提出期限ギリギリまでの調整

提出期限を迎え、締切り時間である5分前に、すべり込みで提出を終えた。

プレゼンテーション当日、全社的な取り組みという意気込みから関連部署より総勢10名で航海訓練所に向かった。

パートナーとしての資質も重要視されることを考えれば、緊張も当然である。東京センチュリーは、総コストの削減につながる多彩なアイデアや、要望にはなかった環境配慮のためのカーボンオフセット方式など独自性もアピール。質疑応答では、質問の内容に応じて担当部署のメンバー各々答えるという全員参加型。まさに総力を結集して臨んだ。

STORY 04

国家プロジェクトの一翼を担う
――その誇りを胸に。

結果が公示されたのは、1週間後であった。多くの部署の協力を得ながら完成した提案内容や当日のプレゼンテーション等は、入札に参加した企業の中で最高の評価点を得たのであった。
大きな達成感を得た瞬間だった。その夜、プロジェクトメンバーが打ち上げの美酒に酔いしれたのは言うまでもない。

落札後、田中と市瀬は金利の確定方法や契約書のフォーマットなど、難題はあったものの、一つ一つお客さまと粘り強くすり合わせ、半年後に正式契約に漕ぎ着けた。

「非常にタイトなスケジュールで凝縮した案件でしたが、お陰さまで落札できたので、いい思い出になりました。こういうプロジェクトは勝てば100、負けたら0。必ずしも、努力したから勝てるとは限りませんから(笑)」晴れやかな笑顔で市瀬は当時を振り返った。

大袈裟かもしれませんが、と前置きし田中はこう語る。「日本は海に囲まれている国で、船舶がなければ物流は立ち行かない。そういう意味では、社会の役に立てたのかなと思いました。それに、日本の財政が苦しい中、民間資金を活用したスキームは、これからも検討される可能性が高いと思います。東京センチュリーとして、その最初のケースを手掛けたアドバンテージも大きいです。」

進水した大成丸が、練習航海に必要な設備などの艤装を終えて、引き渡されるのは間近である。誰もが知っている日本丸、海王丸などの航海訓練所の船隊に「東京センチュリーの船」が加わる日も近い。

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